歴史の常識を覆す「学際研究」の魅力とは?平川南氏が語る人文学の危機を救う読書術と未来への羅針盤

歴史研究の第一線で活躍し、出土文字資料から日本の古代史を鮮やかに紐解いてきた平川南氏。現在は人間文化研究機構の機構長として人文学の発展を支える氏ですが、その原点は意外な出会いにありました。もともとは高校卒業後に大手ビール会社への就職が決まっていたものの、恩師の強い勧めで地元の大学へ進学したという経歴の持ち主です。目的もなく入った大学で出会ったのが、歴史学者である青木和夫氏の講義でした。

青木氏の講義は緻密な論証を重ねるもので、平川氏はその面白さに一気に引き込まれたといいます。青木氏の著書『日本の歴史3 奈良の都』は、当時の国家の仕組みから庶民の暮らしまでを実証的に生き生きと描いた名著です。この本に深い感銘を受けた平川氏は、後に自身も通史の執筆に関わるという夢を叶えることになります。人生を導く恩師や一冊の本との出会いが、いかに人間の可能性を広げるかを物語るエピソードです。

SNS上でも「偶然の出会いから歴史の大家が生まれたストーリーに胸が熱くなる」「一冊の本が人生を変える瞬間の具体例として非常に興味深い」といった声が上がっています。大学時代に手渡された石母田正氏の『中世的世界の形成』も、歴史研究者としての道を決定づける一冊となりました。狭い地域の歴史から時代の大きな転換期を躍動的に描き出す筆致に、歴史におけるダイナミズム表現の重要性を学んだと振り返っています。

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未知の領域へ飛び込む勇気と学際研究のはじまり

平川氏の歩みは、常に恐れず新しい環境へ飛び込む姿勢に満ちています。中学の教科書で出会った金田一京助氏の文章に影響を受け、全く未経験の発掘調査の現場へ飛び込んだ経験もその一つです。1970年からは宮城県の多賀城跡調査研究所で働き始め、多くの優れた考古学者との共同作業を経験しました。この異分野との交流こそが、その後の研究スタイルに大きな影響を与える契機となったのです。

1979年に刊行された『鉄剣の謎と古代日本』は、115文字の文字が刻まれた稲荷山鉄剣の発見を巡るシンポジウムをまとめた書籍です。ここには考古学者や歴史学者だけでなく、国語学者の大野晋氏らも参加していました。異なる学問分野が境界を越えて協力し合う協働的なアプローチを「学際研究」と呼びます。このシンポジウムは学際研究の実質的な出発点であり、平川氏自身もその重要性を肌で感じた瞬間でした。

ネットでは「専門の壁を取り払うことで新しい真実が見えてくるのは現代のビジネスにも通じる」「分野を超えたコラボレーションの原点がここにある」と注目されています。東洋学者である藤枝晃氏の『文字の文化史』も、誰も着目しなかった文字の歴史に焦点を当てた名著です。専門分野という既存の枠組みを突破することの大切さと面白さは、あらゆる学問や仕事において共通する普遍的な真理でしょう。

現代における人文学の危機と社会への応答

国立歴史民俗博物館などの館長を経て、2018年4月1日から人文系研究機関を統括する平川氏。2000年に出会った桝谷邦彦氏の著書『ドイツ魂』の言葉をきっかけに、日本の博物館が発信すべき価値について深く思索を巡らせてきました。導き出した答えは「自然と人間の調和」そして「平和の創出」です。過去の遺物を展示するだけでなく、未来へ向けたメッセージを社会に提示することが博物館の使命だと考えています。

現代は実用的な成果ばかりが重視され、哲学や歴史学、国文学といった「人文学」が危機に瀕していると叫ばれる時代です。しかし、人間や社会にとっての真の豊かさを問い直すために、これらの学問は絶対に欠かせません。ただ殻に閉じこもるのではなく、学問の価値を社会に向けて分かりやすく説明し、対話をしていく必要があります。これからの研究者には、社会と学問を繋ぐ架け橋としての役割が求められているのです。

平川氏は、生物学者である福岡伸一氏の『動的平衡』を参考に、難しい専門知識を平易に伝える工夫の重要性を訴えています。私自身の意見としても、人文学は激動の時代を生きる私たちの精神的な土台となる大切な学問だと確信しています。研究者自らが魅力的な「人文知コミュニケーター」となり、その精神を次の世代へと継承していくことこそが、現代の危機を乗り越えるための確実な羅針盤となるはずです。

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