新しい年を迎える準備に欠かせない「千両(センリョウ)」が、いよいよ街の生花店を華やかに彩る季節となりました。2019年12月28日現在、お正月飾りの主役として店頭を飾るこの植物は、冬の寒さの中で際立つ鮮烈な赤い実と、瑞々しい常緑の葉が美しいコントラストを描いています。その宝石のような輝きから、別名では「草珊瑚(くささんご)」とも呼ばれており、古くから日本人の心を惹きつけてやみません。
SNS上でも「千両を飾ると一気に正月気分が盛り上がる」「赤と緑の色彩が縁起良くて大好き」といった投稿が相次ぎ、伝統的な美しさが世代を超えて支持されている様子が伺えます。この植物は江戸時代の園芸書にも登場するほど歴史が深く、富や繁栄を象徴する縁起物として大切にされてきました。私たちが何気なく目にしているその一枝には、数百年もの間、日本人が紡いできた「福を呼び込む願い」が込められているのです。
見分け方のコツと「億」を超える縁起物の世界
よく似た縁起物の植物に「万両(マンリョウ)」がありますが、実はこれらは分類学上では全く別の種類に属します。最も簡単な見分け方は、実がつく場所を確認することです。葉の上に突き出すように実をつけるのが千両、葉の下に隠れるようにぶら下がるのが万両と覚えておきましょう。こうした名前の由来は、実の数の多さを貨幣の価値に見立てたものだと言われており、他にも百両、十両、一両と名付けられた植物が存在します。
さらに面白いのは、千両と万両をセットで飾ることで「千客万来」という言葉に掛ける粋な楽しみ方がある点です。植物に富の象徴である通貨単位を名付ける当時の日本人の遊び心には、現代の私たちも感心させられます。単なる装飾品としてだけでなく、こうした植物に込められた「言葉遊び」や「願い」を知ることで、お正月のしつらえはより一層深い意味を持つのではないでしょうか。
職人の技が光る栽培の苦労と台風被害の教訓
美しい千両を育てるには、非常に繊細な管理が求められます。千両は強い日差しに弱いため、農家の方々は「楽屋(がくや)」と呼ばれる竹編みの施設を作り、適度な日陰を確保しながら大切に栽培します。さらに、枝を真っすぐ美しく成長させるために、天井から一本ずつ糸で吊るすという気の遠くなるような手作業が行われているのです。2019年11月から出荷が始まっていますが、その一枝には生産者の並々ならぬ情熱が注がれています。
しかし、主要な産地である千葉県館山市などでは、2019年の秋に発生した台風によって大きな被害に見舞われました。栽培に不可欠な「楽屋」が倒壊するなどの打撃を受け、今年の出荷量は例年よりも少なくなっています。都内の生花店では1本あたり770円前後と平年より高値で推移していますが、困難な状況下で届けられた千両には例年以上の価値があるように感じます。困難を乗り越えて実った赤い実は、まさに不屈の象徴と言えるでしょう。
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