恋の駆け引きに悩むのは、人間だけではないようです。名古屋大学の上川内あづさ教授(神経科学)率いる研究チームが、ショウジョウバエのメスがオスの熱烈なアプローチを断り続けた末に、最終的に受け入れるという興味深い脳の仕組みを突き止めました。この大発見は、2020年1月15日にアメリカの著名な科学誌へ掲載され、世界中で大きな話題を呼んでいます。甘酸っぱい恋愛ドラマのような現象が、小さなハエの脳内で科学的に証明されたのです。
メスハエの脳内では、オスのフェロモンや求愛行動を感知すると「PPM3」と呼ばれる特定の神経細胞が活発に働き出します。この神経細胞は、私たちが快感や意欲を感じる際にも深く関わる脳内の化学物質「ドーパミン」を分泌する重要な役割を担っているのです。今回明らかになったのは、そのドーパミンが脳の中心に位置する「楕円体(だえんたい)」という、行動のコントロールや記憶を司る中枢へと送り届けられるプロセスでした。
さらに研究チームがこの楕円体を詳細に分析したところ、驚くべき二面性が浮かび上がりました。楕円体は外側と内側の層に分かれており、ドーパミンが届くと両方が刺激されます。なんと外側の細胞は「交尾の拒否」を促し、内側の細胞は「受け入れ」を誘導していたのです。つまり、最初は拒絶のブレーキが強く働いているものの、執拗な求愛によってドーパミンが蓄積されると、やがて受容のアクセルへと切り替わる仕組みと考えられます。
この神秘的なメカニズムに対して、SNS上では「人間でも最初はタイプじゃなかった相手を好きになることがあるけれど、それと同じなのかもしれない」「ハエの脳内でも複雑な葛藤が起きていると思うと愛おしい」といった共感の声が多数寄せられました。生き物の行動を決定づける脳のシステムは、私たちが想像する以上に精巧でドラマチックです。一見するとシンプルなハエの求愛行動にも、深いサイエンスが隠されているのですね。
筆者は、今回の研究成果が単なる昆虫の生態解明にとどまらず、人間の「心や感情の移り変わり」を紐解く大きなヒントになると確信しています。拒絶から受容へと180度心が揺れ動くプロセスに、特定の神経伝達物質がブレーキとアクセルの両方をコントロールしている点は非常に魅力的です。脳科学の進歩によって、将来的に私たちのコミュニケーションや恋愛心理の謎がさらに解き明かされる日が来ることを、今から心待ちにしています。
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