日本企業の海外M&A(合併・買収)戦略に、警鐘が鳴らされています。大手監査法人グループのPwCアドバイザリーが実施した調査によると、過去10年間に海外企業を買収した国内上場企業のうち、実に**36%**が買収後の業績が当初の計画を下回っているという厳しい実態が明らかになりました。この調査は2018年9月から11月にかけて行われ、174社の回答を得て集計されたものです。
買収の成否を分けるとされる「相乗効果(シナジー効果)」の創出が想定通りに進んでいないことが、大きな原因の一つに挙げられます。具体的には、「100%以上達成した」と答えた企業がわずか11%に留まる一方で、「相乗効果がほぼない、またはマイナスの影響が出た」という企業も**16%**に上っているのです。特に、「互いの商品を売り込むクロスセルによる売上拡大」や「新製品の共同開発による売上拡大」といった施策が想定通りにいかなかったとする回答が、それぞれ4割強に達しました。
この業績不振の波は、財務面にも影響を与えています。買収時の価格と買収された企業の純資産との差額にあたる「のれん」について、「減損損失を計上した、または計上する見込みがある」と答えた企業は**35%**にも及びました。これは、買収価格が実態に比べて割高であった可能性を示しており、実際に「相乗効果を積極的に織り込んだ価格で買収した」という企業は28%にも上っています。一方、「買収先の企業単独の価値で買収した」という慎重なケースは20%に留まりました。
PwCアドバイザリーの石崎豪朗パートナーは、「M&A自体が目的となってしまい、買収後の体制づくりに力を入れない日本企業が多い」と指摘しています。業績を改善するためには、通常、買収後に現地子会社との統合を進めるなど、「グループの再編成が必要になる」というのが石崎氏の見解です。しかし、買収後に相乗効果を出すための「施策別に詳細かつ抜本的な見直しをしている」と答えた企業は36%に過ぎず、「特に施策の見直しはしていない」といった企業が多い状況が見て取れます。
この報道に対して、SNSでは「やはり買収は難しい」「M&Aの成功例はニュースになるけど、失敗は隠されがち」「のれんの減損って、つまりは高値掴みってこと?」といった、日本企業の海外M&Aに対する懸念の声や、財務リスクに関する具体的な反応が多数見られました。また、「買収後のPMI(Post Merger Integration:買収後の統合プロセス)こそが最も重要だ」という、専門的な視点からの意見も多く投稿されています。
私個人の意見としては、この調査結果は、日本企業が海外M&Aを進めるうえで「量より質」を追求する必要性を強く示唆していると考えます。単に海外市場への進出を急ぐあまり、将来の売上高などの相乗効果を過大に見積もった高値での買収は、最終的に「のれんの減損」という形で、企業価値を損なうリスクを内包しています。石崎氏が提言するように、売上高といった楽観的な見込みだけでなく、コスト削減効果など、より確実性の高い要素だけを買収価格に織り込むなど、より慎重に買収額を決める姿勢が今こそ求められているのではないでしょうか。そして、買収が成立した後こそ、現地との文化や体制を融合させるPMIに、経営資源を惜しみなく投じる覚悟が必要不可欠でしょう。
専門用語の分かりやすい解説
M&A(合併・買収): 企業の買収や合併のことです。「Mergers (合併) and Acquisitions (買収)」の頭文字を取った言葉で、企業が成長戦略を実現する手段として広く用いられています。
のれん: 買収された企業の「ブランド力」や「技術力」「顧客基盤」など、会計帳簿には記載されない無形の価値を金額で表したものです。具体的には、買収価格から買収された企業の純資産を差し引いた差額を指します。
減損損失: 企業の資産の収益性が低下し、帳簿上の価値(のれんなど)を将来的に回収できる見込みがなくなった場合に、その価値を切り下げる処理を言います。この処理によって、損失として計上される金額が減損損失です。
相乗効果(シナジー効果): 二つ以上のものが組み合わさることで、個々が単独で存在する場合よりも大きな効果を生み出すことを指します。M&Aにおいては、買収によって売上増やコスト削減などが期待される効果のことです。
クロスセル: ある商品を購入しようとしている顧客や、既に購入した顧客に対して、それに関連する別の商品やサービスを勧めて販売促進を図る手法のことです。
コメント