現代の日本において、私たちの生活の基本単位である「世帯」のあり方が急激に変貌を遂げています。近年は少子高齢化の波が押し寄せるなか、一人暮らしの方や夫婦二人だけで暮らす世帯が目に見えて増えているのです。かつて当たり前だったライフスタイルが、今や過去のものになりつつあると言っても過言ではありません。
2000年3月31日と2015年10月1日の国勢調査のデータを比較してみると、その変化は一目瞭然でしょう。単身世帯の割合が約28%から約35%へと上昇した一方で、かつて「標準世帯」と呼ばれた夫婦と子どもからなる世帯は、約32%から約27%へと減少しました。社会の構造自体が、個人の孤立化へ向かっていることを示しています。
特に深刻なのが、高齢者における一人暮らしの急増です。65歳以上のシニア世代の状況に焦点を当てると、自分だけで生活を営む単独世帯は、2000年3月31日時点の約20%から2015年10月1日には約27%にまで跳ね上がりました。その一方で、親・子・孫が同居する三世代世帯は約27%から約12%へと半減以下に激減しています。
現代は人生100年時代を迎えており、90歳や100歳まで健康に長生きすることは決して珍しい現象ではありません。子どもが自立した後に夫婦のみで過ごし、やがて配偶者と死別してからは長期間にわたり単身で生活を続けるという、新しいライフサイクルが定着しているのです。私たちは今、孤独と向き合う長い老後を覚悟せねばなりません。
世帯が小さくなる背景には、人々の結婚に対する価値観の変化や未婚化の進行も大きく影響しています。50歳時未婚率(生涯未婚率)は急上昇の途上にあり、2015年10月1日時点で男性は約23%、女性は約14%に達しました。近い将来には、男性の3人から4人に1人、女性の5人に1人が独身のまま老後を迎えるという予測すらあります。
SNS上でもこの現実に対して、「老後を1人で生き抜く自信がない」「家族に頼れない以上、国がしっかりしてくれないと困る」といった将来への不安や悲痛な声が数多く寄せられていました。また、「若いうちから経済的な自立だけでなく、地域のコミュニティとの繋がりを作っておくべきだ」と、自己防衛の必要性を痛感する意見も目立ちます。
本来、社会保障には高齢や介護、失業といった人生の予期せぬ困難を社会全体で分かち合う「リスクシェア」の機能があります。社会のメンバーでお金を出し合い、誰かが困ったときに損失を埋め合わせる社会保険の仕組みです。しかし現在、国の財政は逼迫(ひっぱく)しており、公的なセーフティネットの縮小は避けられない見通しです。
私は、これからの時代こそ社会保障制度の抜本的な見直しが必要だと確信しています。これまで日本の福祉は、経済的な困窮や介護の負担を「家族での助け合い(リスクシェア)」という無償の労働に依存しすぎていました。しかし、頼るべき家族そのものが消滅しつつある今、国がその役割を代替する仕組みへシフトしなければなりません。
家族の絆という美名の下で個人の犠牲を強いる時代は、もう限界を迎えています。これからは、小規模化する世帯の現実に寄り添い、単身者でも安心して老後を全うできるような新しい社会保障の設計図を描くべきでしょう。本連載を通じて、家族に代わる新たなリスクシェアの形と、私たちが目指すべき福祉の未来像を考えていきます。
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