かつて「終わった会社」とまで囁かれた巨大IT企業が、今まさに歴史的な復活劇を演じています。米マイクロソフトが2019年07月18日に発表した2019年06月期通期決算は、売上高が前年比14%増の1258億4300万ドル、純利益は約2.4倍の392億4000万ドルという、驚異的な過去最高記録を打ち立てました。SNS上では「もはやWindowsの会社ではない」「ナデラCEOの経営手腕が神がかっている」といった驚きの声が溢れ、投資家たちの視線を一身に集めています。
この劇的な躍進を支えているのは、従来のソフトウェアを「売り切る」モデルから、インターネットを通じて継続的にサービスを提供する「クラウド」への大胆なシフトです。サティア・ナデラ氏が最高経営責任者(CEO)に就任した2014年06月期と比較すると、その変化は一目瞭然でしょう。当時は売上全体のわずか16%だったクラウド関連事業が、現在では47%にまで急成長し、名実ともに同社の屋台骨へと進化を遂げたのです。
「手本」を飲み込むスピード感と圧倒的な資金力
特筆すべきは、競合他社の成功を徹底的に研究し、それを上回るスピードで自社のサービスへと昇華させる同社の貪欲さです。例えば、社内コミュニケーションツールとして先行していた「Slack(スラック)」に対し、マイクロソフトは「Teams(チームズ)」を投入して猛追しました。2019年07月時点で1日あたりの利用者数が1300万人を突破したというニュースは、まさに後発ながらもプラットフォームの強みを活かした勝利の証と言えるかもしれません。
クラウド基盤の「Azure(アジュール)」においても、首位を走るアマゾン・ドット・コムの背中をぴたりとマークし、新機能が発表されれば即座に追随する執念を見せています。こうした「巨象」らしからぬ機動力こそが、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が独占禁止法やプライバシー問題の逆風にさらされる中で、マイクロソフトの時価総額が1兆ドルを超えて安定している最大の理由だと言えるでしょう。
ここで言う「クラウド」とは、自分のパソコン内にデータを保存するのではなく、ネットワーク上の巨大なサーバーにデータを預け、どこからでも作業ができる仕組みを指します。また、マイクロソフトが注力する「複合現実(MR)」とは、現実の世界にデジタル情報を重ね合わせて表示する技術で、これらがビジネスの形を根底から変えようとしています。私たちは今、SF映画のような世界が日常になる瞬間に立ち会っているのかもしれません。
ビル・ゲイツ氏が予言する「5年後の未来」と次なる挑戦
しかし、王者の道は決して平坦ではありません。これまではアマゾンという明確な「手本」が存在していましたが、時価総額でトップに躍り出た今、同社は自らが未知の領域を切り拓く先駆者にならなければならないからです。2019年07月17日から18日にかけて開催された研究開発イベントでは、創業者であるビル・ゲイツ氏も登壇し、人工知能(AI)やMRが融合した近未来のオフィスの姿について熱く語りました。
ゲイツ氏は「あと5年もすれば、今見せているデモンストレーションが現実になる」と予測しています。私個人の見解としては、OSという過去の遺産に固執せず、自らの成功体験を否定してまで変革を断行した今のマイクロソフトなら、その未来を主導する可能性は極めて高いと感じます。単なる効率化ツールを超えて、人間の創造性を拡張する「知能のインフラ」へ。ナデラ氏率いる新生マイクロソフトの真の戦いは、ここから始まるのでしょう。
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