現在、次世代通信規格として大きな注目を集めている「5G」ですが、日本国内では特定の敷地内に限定して高度な通信網を構築する「ローカル5G」への関心が急速に高まっています。総務省が2019年12月24日に免許申請の受付を開始してから約1カ月が経過した2020年01月21日時点で、既に10以上の企業や自治体が名乗りを上げました。SNSでも「自社専用の高速回線が持てるのは革新的」「ビジネスの勢力図が変わりそう」と、大きな反響を呼んでいます。
このローカル5Gとは、携帯電話会社が全国に展開する公衆網とは異なり、企業や自治体が自らの建物や敷地内に独自に構築できる専用の5Gネットワークのことです。これにより、電波が必要な場所や時期を土地の所有者が自由に決定できるようになります。さらに、それぞれのビジネスの用途に合わせて、通信速度や接続数などの性能を柔軟にカスタマイズできる点が最大の強みと言えるでしょう。
これまで広く使われてきた「Wi-Fi(ワイファイ)」は、手軽に無線環境を構築できる反面、混雑時の通信の安定性やセキュリティに課題を抱えていました。一方でローカル5Gは、政府から許可された専用の電波を独占して使用するため、通信の信頼性が圧倒的に高まります。データが外部に漏洩するリスクを極限まで抑えられるため、機密情報を扱う産業用途にはまさにうってつけの技術なのです。
特に大きな期待が寄せられている分野が、スマート工場や最先端の農業経営です。工場内の大量のロボットや農場に設置された高精度センサーを遠隔から一括操作できれば、人手不足の解消や業務の大幅な効率化が実現するでしょう。通信の遅延がほとんどないため、危険を伴う重機の遠隔操作なども安全に行えるようになります。このように、私たちの暮らしや産業を根本から変えるポテンシャルを秘めています。
海外に目を向けると、ドイツでも同様の取り組みが始まっていますが、あちらは主に製造業の工場向けに限定されています。対する日本は、携帯大手が使う電波と同等の高性能な帯域が割り当てられており、幅広い産業での応用が見込まれているのが特徴です。世界に先駆けて多様なユースケースを生み出せる環境が整っており、日本がこの分野で国際的な主導権を握る絶好のチャンスが訪れていると言えます。
しかし、手放しで喜んでばかりはいられません。日本独自の仕様が進化しすぎた結果、海外で通用しなくなる「ガラパゴス化」を懸念する声も専門家から上がっています。現在の世界的なトレンドは、通信機器をソフトウェアで制御する「ネットワークの仮想化」であり、特定の場所に縛られるローカル5Gはこの流れに逆行しているのではないかという指摘もあるのです。
私は、日本がこの先進的な取り組みを成功させるためには、最初からグローバル展開を見据えた製品開発が不可欠だと確信しています。国内の成功だけで満足していては、かつての高機能ガラケーの二の舞になりかねません。参入を表明した大手電機メーカーが語るように、まずは国内で圧倒的な実績と洗練されたシステムを構築し、それをパッケージ化して世界の規制に柔軟に適応させていく戦略が求められます。
日本発のローカル5G技術が、世界の産業インフラを支えるスタンダードとなる日は来るのでしょうか。国内での熱狂的な盛り上がりを、いかにして世界市場への推進力に変えていけるかが、今後の成否を分ける最大の鍵となるでしょう。技術革新の最前線から、今後も目が離せません。
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