かつて居酒屋といえば、大型のチェーン店や、お仕事帰りのサラリーマンが暖簾をくぐる赤ちょうちんの店というイメージが一般的でした。しかし2020年01月24日現在、そんな昭和の面影を色濃く残すノスタルジックな酒場が、トレンドに敏感な若年層の女性たちの間で密かなブームとなっています。彼女たちを惹きつける背景には、「レトロ」と「インスタ映え」という2つのキーワードが深く関係しているようです。
SNS上でも「渋い雰囲気が逆に新鮮」「おじさん達に混ざって飲むのが楽しい」といったポジティブな反響が相次いでいます。こうした現象は、単に美味しいお酒を飲むことだけが目的ではありません。昭和を知らない世代が、当時のカルチャーを新鮮なものとして楽しむ「ネオレトロ」という価値観が定着しつつある証拠だと言えるでしょう。
神奈川県横浜市の桜木町にある「大衆食堂2・0とぽす」では、タピオカやアイスに代わる新たなトレンドとして、ユニークな器が注目を集めています。SNSの口コミを見て遠方から訪れた女性は、祖父母の家を彷彿とさせるキャラクターが描かれたグラスに「エモさ」を感じると語ってくれました。お酒とは思えないほど愛らしい容器で提供されるメニューは、見る者の心を掴んで離しません。
ここで使われる「エモい」という言葉は、感情が揺さぶられる様子や、哀愁を帯びた懐かしさを表現する若者言葉です。ただ綺麗なだけではなく、どこか泥臭くて温かみのあるデザインこそが、彼女たちの心を動かす原動力になっています。洗練された現代のデザインに囲まれて暮らす若者にとって、少し不器用で人間味のある昭和のデザインは、何よりも魅力的に映るのです。
東京都内にある鮭料理が自慢の立ち飲み屋「しゃけスタンド」も、若い女性たちの心を捉えています。お馴染みの魚のイラストが施されたビールグラスと、古き良き酒場の風情とのギャップがたまらないと評判です。ビールという一見すると無骨な飲み物が、器の工夫ひとつでSNSに投稿したくなるお洒落なコンテンツへと見事に変貌を遂げています。
また、博多弁のフレーズがプリントされたジョッキが話題を呼んでいる居酒屋チェーン「ハカタホタル」も大人気です。実際に足を運んだ女性は、自己主張しすぎない控えめな可愛らしさが魅力だと絶賛しています。これまでは色彩が鮮やかで派手なカフェメニューがSNSの主役でしたが、現在はあえて「盛りすぎない」自然体な投稿を好む傾向へとシフトしている模様です。
ファッションの世界でも数年前から過去のトレンドを再解釈する動きが続いていますが、その波がいよいよ飲食業界にも本格的に押し寄せてきました。私は、この「レトロ可愛い居酒屋」の流行は一過性のブームに終わらないと考えています。なぜなら、デジタル社会に生きる若者たちが求めているのは、計算された完璧さではなく、五感で感じる温もりや心地よい違和感だからです。
かつてはSNS発信とは無縁だと考えられていた大衆酒場が、工夫次第で若い世代の聖地になるという流れは、非常に興味深い現象です。懐かしさと新しさが絶妙に融合した魅力的な飲み屋は、2020年の飲食業界を牽引する一大トレンドになるに違いありません。仕事帰りにふらっと立ち寄れる気軽さと、SNSに共有したくなる特別感を併せ持つ名店へ、ぜひ出かけてみてはいかがでしょうか。
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