あの「科学」や「学習」などの学習雑誌で馴染み深い学研ホールディングスが、今や「介護関連の注目株」として株式市場で熱い視線を集めています。2019年以降、同社の株価は8割以上も急上昇を遂げ、2019年12月には約23年ぶりとなる高値を記録しました。少子化の影響によって主力の学習塾や参考書などの教育ビジネスが苦戦を強いられる中、医療福祉事業が驚異的な伸びを見せており、高齢化社会を追い風にしたさらなる利益成長に期待が寄せられています。
SNS上でもこの変革は話題を呼んでおり、「学研が介護をやっているなんて知らなかった」「教育のノウハウを活かしたシニア事業なら安心感がある」といった驚きと好意的な声が溢れています。同社が横浜市鶴見区で運営する「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」は、まさにその象徴と言えるでしょう。この施設は、比較的お元気なシニア層が安心して暮らせるよう、安否確認や生活相談などの見守りサービスが備わった賃貸住宅のことです。
一般的な高齢者施設とは異なり、このサ高住の建物内には学習教室や自治体の施設が併設されています。そのため、時には子どもたちの元気な声が響き渡り、地域住民も気軽に立ち寄る温かい空間が広がっているのです。高齢者だけで閉鎖的な環境を作らないための素晴らしい工夫であり、世代を超えた交流が生まれる場となっています。教育事業で培った「人を育むマインド」が、シニアの生きがい支援にも見事に活かされていると感じます。
業績の数字を見ても、その勢いは一目瞭然です。2019年9月期の連結売上高1405億円のうち、56%は依然として参考書やオンライン英会話などの教育分野が占めています。しかし本業の儲けを示す営業利益に目を向けると、医療福祉事業が初めて教育事業を逆転しました。前の期の3倍近い30億円弱を叩き出し、連結営業利益の実に66%を稼ぎ出す主軸へと急成長を遂げたのです。単なる教育の会社から、社会課題を解決する企業へと変貌しています。
学研が介護ビジネスに本格参入したのは2004年のことでした。当初はサ高住の開設費用などが先行して採算が厳しく、株価も2017年末までは2000円前後でのもみ合いが続いていたのです。そんな同社の大きな転機となったのが、2018年9月に行った「メディカル・ケア・サービス(MCS)」の買収劇でした。MCSは、軽度から中度の認知症を患う高齢者がスタッフと共同生活を送る「グループホーム」を専門に手掛ける大企業です。
グループホームは1カ所あたり20人程度と小規模ですが、専門的なケアを提供するため国から支払われる報酬も加わり、業績を伸ばしやすい特徴があります。この買収によって学研は、比較的自立した人向けのサ高住から、手厚いケアが必要な人向けのグループホームまで、一気通貫でサービスを提供できるようになりました。顧客からの多様な相談に一括で対応できる体制が整ったことで、広告効率も劇的に向上したのです。
高齢者向け住居の需要は、今後も確実に拡大していくことは間違いありません。学研HDは攻めの姿勢を崩さず、2020/01/25現在も施設を増やし続ける方針を掲げています。2020年9月期末には、サ高住などの高齢者住宅を19年9月末より17カ所多い153施設へ、グループホームは7カ所増やして276施設にする計画です。従業員の適正な再配置なども進め、さらなる利益率の向上を目指す同社の戦略には、抜かりがありません。
市場からの評価も非常に高く、2019年12月に株価7900円を付けた後も、現在は7500円近辺を維持しています。証券アナリストからは、両事業の成長力を考えれば株価にはまだ上昇の余地があるとして、2020年11月末までの目標株価を8300円と予想する声も出ています。介護現場の人手不足という課題はありますが、ここを乗り越えて収益力を高め続ければ、市場における「一流の成長株」としての地位は不動のものになるでしょう。
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