インターネットショッピングの利便性と、実店舗での体験をこれまでにないレベルで融合させた企業が、中欧チェコで快進撃を続けています。その名は「Alza(アルザ)」。同社は2019年10月07日現在、チェコ国内のEC(電子商取引)市場で最大手として君臨し、独自の戦略で欧州の小売業界に旋風を巻き起こしています。
特に注目を集めているのが、2018年に首都プラハで産声を上げた「STORE OF THE FUTURE(未来の店舗)」です。約60平方メートルの空間には、大小400個もの受取用ボックスが整然と並んでいます。驚くべきことに、この店舗には接客スタッフが一人も存在しません。SNS上でも「深夜でも早朝でも、自分のタイミングで荷物を受け取れるのが画期的」と、その利便性に驚きの声が上がっています。
徹底した顧客志向が生んだ「10秒」の受け取り体験
利用者は専用サイトで商品を注文した後、スマートフォンに届く暗証番号を入り口で入力するだけで入店できます。中に入ると、自分の荷物が入ったボックスが点灯し、足元のライトがそこまでエスコートしてくれるという、まるでSF映画のような演出が施されています。入店から退店までわずか10秒ほどで完了するスピード感は、忙しい現代人にとって究極の時短と言えるでしょう。
ここで「EC(イーシー)」という言葉について解説しましょう。これは「Electronic Commerce」の略で、日本語では「電子商取引」と訳されます。インターネット上でモノやサービスを売買する仕組みのことですが、アルザはこのデジタルな仕組みを、物理的な「箱」というリアルな拠点で補完することに成功したのです。
同社が扱う商品は、パナソニックやソニーといった日本メーカーの家電を含む20万点以上。配送拠点から1日3回も商品が運ばれるため、注文から数時間で受け取りが可能という驚異的なサイクルを実現しています。チェコでは日本のような宅配ボックスが一般的ではないため、自宅に縛られず好きな時間に受け取れるこのシステムは、まさに消費者の「かゆいところに手が届く」サービスなのです。
「売らない」店舗が購買意欲を刺激する理由
アルザの革新性は受け取り拠点だけではありません。約50店舗を展開する実店舗の一部では、フロアに在庫を一切置かない「ショールーム型」の運営を徹底しています。ここでは、商品を「売る」ことよりも「体験する」ことに重きを置いています。例えばゲームコーナーでは、最新のソフトを実際にプレイして納得してから購入できる仕組みが整っています。
気に入った商品があれば、QRコードをスキャンして決済を済ませます。その数分後には、バックヤードからスタッフが商品を持ってきてくれるため、重い荷物を持って店内を歩き回る必要もありません。こうした「ショールーミング(実店舗で商品を確認し、ネットで購入すること)」を逆手に取り、自社のサービスとして昇華させている点に、アルザの先見の明を感じます。
私は、このアルザの戦略こそが、EC時代における実店舗の「正解」の一つだと確信しています。単に商品を並べるだけの店はネットに淘汰されますが、五感を刺激する体験と、ストレスのない受け取り環境を提供する店は、ブランドの熱狂的なファンを作る場所になるはずです。2019年以降、日本でもこうした「体験型店舗」が増えるヒントが、チェコの地に隠されているのではないでしょうか。
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