🚀世界のアパレル巨人「ZARA」を追撃せよ!ファストリが挑むデジタル戦略と在庫効率改善の最前線

アパレル業界のグローバルリーダーを目指すファーストリテイリング(ファストリ)が、今、大きな転換点に立っています。同社は2018年8月期まで2年連続で連結純利益の過去最高を更新し、特にアジア事業を新たな収益の柱として大きく成長させました。その結果、時価総額ではアパレル世界第2位にまで浮上しており、日本国内の小売業においてもセブン&アイ・ホールディングスを抜き去り首位の座を確立するなど、その勢いは止まることを知らないように見えるでしょう。

しかし、アパレル業界の絶対的な巨星、スペインのインディテックス社が展開する「ZARA(ザラ)」は、ファストリの遥か先を行く存在です。2019年6月22日時点での情報では、ファストリがこの巨人との差を縮め、追い越すためには、従来の延長線上ではない、大胆で不連続な成長が必要不可欠であると考えられます。ファストリの柳井正会長兼社長は、2019年4月の決算説明会で「まったく新しいステージに入った」と語っており、これまでの成功体験から一歩踏み出し、次なる飛躍への強い決意を示しているようです。

インディテックスの最大の強みは、サプライチェーン(商品の原材料調達から最終消費者に届くまでの流れ全体)における圧倒的なスピードと機動力です。彼らは、各国店舗から集めた売れ筋情報を基に商品を企画し、わずか2週間から3週間という驚異的な短期間で消費者の手に届ける体制を構築しています。これにより、多品種少量のトレンド商品を「高速回転」で市場に投入し、需要の変動に機敏に対応しているのです。在庫処分のための大規模なセールをほとんど行わず、広告宣伝費も抑えられていることから、営業利益率はファストリを5ポイントも上回る16%を誇り、生み出された潤沢なキャッシュフロー(企業の現金の流れ)を積極的な事業拡大と投資に振り向けているのが特徴です。その勢いは凄まじく、世界の店舗数は約7500店に達し、売り場面積はこの10年で倍増しています。

このインディテックスの「高速回転」戦略を象徴するのが、棚卸し資産回転率という指標です。これは、売上高を期中平均の棚卸し資産(在庫)で割って算出され、数値が高いほど商品を効率よく販売し、在庫が滞留していないことを示します。インディテックスの2018年度の回転率は9.61回に達し、1年間に商品が約10回転していることを意味します。これに対し、ファストリは6.43回(計上基準変更前ベース)となっており、在庫効率に大きな改善の余地があると言えるでしょう。

もちろん、ファストリは「ユニクロ」において、最新トレンドを追うインディテックスとは異なり、ベーシックなデザインや高い機能性を追求するビジネスモデルを採用してきました。J.P.モルガン証券の村田大郎氏が指摘するように、「価格対比でみた商品価値が高く、差別化につながった」点は、ファストリの最大の強みであり、この基本戦略が棚卸し資産回転率を相対的に低くしている側面もあります。しかしながら、ファストリの回転率は2014年8月期の7.08回から2018年8月期には6.43回へと低下傾向にあり、商品供給が顧客ニーズに十分に対応しきれていない可能性が示唆されます。つまり、在庫効率の改善は、ファストリにとって喫緊の課題となっているのです。

この状況を打破するため、ファストリは「無駄なものを作らない、運ばない、売らない」という、柳井会長兼社長が提唱する情報製造小売業の実現を目指しています。これは、デジタル技術を徹底的に活用し、商品の企画から販売までの情報を一元管理することで、サプライチェーン全体を最適化する「有明プロジェクト」として具体化されています。需要予測の精度を高めることによって、過剰在庫による値引き販売や、販売機会の損失となる品切れをなくすことが狙いです。さらに、子会社のGU(ジーユー)では在庫を持たない試着専門の店舗を都内に開設し、ネット通販も積極的に拡大する方針を打ち出しており、デジタルを軸とした革新的な戦略が着々と進められているのです。

ファストリが進めるデジタル戦略は、従来の成功体験からの脱却を意味し、フロンティア・マネジメントの山手剛人氏が指摘するように、「国内での成功実績が大きかった分、容易に進みにくい面もある」という難しさも伴います。これまでのやり方を変えることには、必ず痛みと抵抗がつきものです。しかし、この困難な改革を成し遂げることができれば、インディテックスとの差は劇的に縮まり、世界一のアパレル企業という目標がぐっと現実味を帯びてくるでしょう。ファストファッションの巨人であるインディテックスを追い越すためには、このサプライチェーンと在庫効率の革命こそが、成功の鍵を握っていると私は確信しています。

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