北海道の玄関口である新千歳空港と最大の都市・札幌を結ぶJR北海道の快速列車「快速エアポート」は、まさに同社の**「虎の子」とも言うべき重要な路線です。札幌駅と新千歳空港駅は、道内における平均乗降客数で1位と2位を占めており、この両駅を最速約40分で結ぶ快速エアポートは、出張客や観光客にとって欠かせない移動手段となっています。しかし、終日混雑しているにもかかわらず、現在(2019年6月時点)の本数は1時間あたり片道最大4本にとどまっています。その背景には、列車を増やしたくても増やせない見えない壁が存在しているのです。
この状況を打破するため、JR北海道はいくつかの具体的な施策を打ち出しています。まず、2020年春のダイヤ改正では、快速エアポートを1時間に最大5本へ増発する計画を立てています。さらに、2023年度から2024年度にかけては新型車両を導入し、1編成あたりの乗車定員を約1割増やすことで、輸送力強化を目指しているようです。しかし、この「たった1本」の増発を実現するためにも、線路側の地ならしが不可欠となります。安全な鉄道運行の基本ルールとして、信号機と信号機の間、すなわち閉塞区間(へいそくくかん)には、衝突を防ぐため原則として1台の列車しか入れません。信号機を増設し、閉塞区間同士の距離を短くすれば、より多くの列車を走らせることが可能になるため、JRは既にこの増設工事に着手しているとのことです。
とはいえ、千歳線の線路容量は限界に近づいており、現時点では1時間あたり6本以上の運行は困難であるとJR北海道は見ているようです。なぜなら、この千歳線は快速エアポートだけでなく、普通列車、石勝線や室蘭線から乗り入れる特急列車、そして何よりもJR貨物が運行する貨物列車がダイヤを分け合う「渋滞」状態にあるからです。午前8時から午後8時の間、千歳線では上下線合わせて1時間あたり約20本もの列車が走行しており、これは片道約6分に1本という高頻度運行を意味します。この過密ダイヤの中にエアポートを1本増やすだけでも、さらに余裕がなくなることは想像に難くありません。
また、札幌市白石区にある札幌貨物ターミナル駅との共存も、ダイヤ編成上の大きな難題として立ちはだかっています。同駅はコンテナ貨物取扱量で国内2位を誇り、北海道の農産品や乳製品、宅配便などを本州と結ぶ重要な物流拠点であり、1日に定期列車47本が発着しています。問題は、千歳線から支線のように延びる貨物線が、新札幌駅の手前で千歳線本線に合流している現在の構造です。貨物列車が新千歳空港方面へ向かう際、一時的に旅客列車が使用する下り線を横切る必要があるため、札幌方面に向かう旅客列車が貨物列車に道を譲る「通過待ち」が発生しています。わずか約5分の待ち時間とはいえ、これがダイヤ全体を圧迫する要因となっており、JR貨物との運行調整は避けて通れない課題なのです。
このような状況を根本から解決するには、上下線を2本ずつに増やす複々線化が最も有効ですが、実現には途方もない費用と長い年月がかかります。そこで、JR北海道が2019年4月に発表した「長期経営ビジョン」には、快速エアポートの編成を現在の6両から7両に増やすことと並んで、「新千歳空港駅のスルー化」検討という野心的な構想が盛り込まれました。現在、新千歳空港駅は南千歳駅から分岐して地下へ入る単線の行き止まり構造となっており、これが折り返し時間のロスを生んでいます。スルー化とは、この空港駅を通り抜けて再び千歳線本線に合流する新たな線路や地下トンネルを建設し、通過型の構造に変えることです。これは数十億円から数百億円を要する大規模工事であり、もちろん7両化にも、ホーム延伸や整備工場の拡張など多額の投資が伴います。しかし、空港アクセス機能の強化は、年400億円規模の営業赤字を抱え、2011年の石勝線脱線火災事故以来、安全投資を最優先してきたJR北海道にとって、数少ないドル箱である快速エアポートの競争力を高めるための悲願でもあります。
この報道に対し、SNSなどでは「ダイヤがきついのは知っていたが、貨物線との兼ね合いがここまで深刻だとは驚き」「新千歳空港駅の混雑は本当に何とかしてほしい」「スルー化は夢があるが、JR北海道の財政で本当にできるのか心配」といった、驚きと期待、そして経営への懸念の声が多く見受けられました。私見ですが、利用者満足度向上と経営再建のためには、この空港アクセス強化は最重要課題**だと考えます。安全投資はもちろん最優先ですが、安定した収益源を確保できなければ、未来の安全維持すら危うくなります。JR北海道は現在、「(国土交通省をはじめとする)関係機関と事業の実現性について相談していく必要がある」と慎重な姿勢を崩していませんが、この霧中の再出発を成功させるためには、決断力とスピード感をもって、この「稼ぐ力」を占う大事なピースをどう進めていくか、試される局面はそう遠くないでしょう。
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