世間が受験シーズンに包まれる2020年1月27日、落語家の春風亭一之輔さんが日常で耳にする「すべる」という言葉のルーツや、芸人たちの絶妙な心理について興味深い持論を展開しています。
お笑い界で頻繁に使われる「すべる」という表現ですが、これはギャグがウケない状態を意味する業界用語です。1990年代に関西の芸人が全国ネットの番組で多用したことで、関東へも一気に浸透したと言われています。SNS上でも「言葉の響きが軽くて、失敗の深刻さを和らげてくれる」と共感の声が集まっていました。
現在42歳の一之輔さんは、この言葉の持つ独特のニュアンスにどこか違和感を抱いているそうです。なぜなら「すべる」という表現には、暗に「ウケないのは客席という氷の舞台のせいだ」という、どこか責任を転嫁するような呑気な雰囲気が漂っているからではないでしょうか。
一方で、一之輔さんより上の世代の落語家たちは、ウケなかった際に「蹴られる」という言葉を使うそうです。これは高座と呼ばれる落語のステージから降りた演者が、冗談交じりに使う表現で、客席から拒絶されたことを意味します。しかし不思議と悲壮感はなく、むしろ「自分は被害者だ」と言わんばかりの軽やかさがあります。
落語家たちが楽屋で見せる負け惜しみのバリエーションは実に多彩です。「客が疲れている」「暖房が効きすぎている」など、ウケない原因をあらゆる周囲の環境のせいに仕立て上げます。挙句の果てには「世も末だ」と、時代のせいにする猛者まで現れる始末で、その執念には思わずクスリとしてしまいます。
しかし、彼らは見事にウケたときには一転して「今日は良いお客さんだ」と、周囲を称賛することを忘れません。良くても悪くても原因を自分以外の他者に委ねるという、この愛すべき「いい加減さ」こそが、人間の本質を包み込む落語の深い魅力につながっていると私は確信しています。
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