台風で屋根瓦が飛んで隣の窓を割ったら?弁護士が教える損害賠償と「不可抗力」の境界線

2019年9月の台風15号、そして続く10月の19号と、記録的な暴風雨が日本列島を襲い甚大な被害をもたらしています。被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。こうした自然災害の際、避けて通れないのが「自宅の屋根瓦が飛んで隣家の窓を割ってしまった」といった近隣トラブルによる賠償問題ではないでしょうか。

SNS上でも「自分のせいではないのに責任を問われるのか」「業者が捕まらず修理できない間に被害が広がった」という悲鳴に近い声が数多く上がっています。実は、法律の世界には「不可抗力」という考え方があり、必ずしもすべての損害を家主が負担しなければならないわけではありません。今回はこの複雑な賠償責任の仕組みを紐解いていきましょう。

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工作物責任と「瑕疵」の意味を知る

まず基本となるのが、民法に定められた「土地の工作物責任」というルールです。ここで言う「工作物」とは、建物や屋根、塀などの設置物のことを指します。もしこれらの管理に「瑕疵(かし)」、つまり本来備わっているべき安全性が欠けていたために他人に損害を与えた場合、その所有者や占有者は賠償する義務を負うことになります。

特に所有者の責任は「無過失責任」と呼ばれ、たとえ本人に不注意がなかったとしても、設備に欠陥があれば責任を免れることができない非常に重いものです。しかし、2019年11月01日現在の状況を鑑みると、すべてを所有者のせいにするのは酷なケースも存在します。なぜなら、想定を遥かに超える天災は「不可抗力」とみなされるからです。

「不可抗力」とは、現代の技術や注意義務をもってしても防ぎようのない事態を指します。記録的な暴風が吹き荒れる中では、たとえ屋根が万全な状態であっても瓦が飛ぶことは避けられなかったと判断される場合があり、その際には瑕疵と損害の間に因果関係がないとして、賠償責任が発生しない可能性が出てくるのです。

修理待ちの二次被害は「一連の災難」か

今回の相談者様のように、2019年09月上旬の台風15号で壊れた箇所が、修理を待つ間に10月の台風19号で飛散してしまったケースは非常に悩ましい問題です。「すぐに直さなかったから管理不足だ」という指摘も一見正論に聞こえますが、現実はそう単純ではありません。各地で被害が相次ぎ、修理業者の手配がつかないのは周知の事実です。

私個人の見解としても、前回の被災から間を置かずに次の台風が襲来した今の状況は、一連の継続的な災害として捉えるべきだと考えます。「直さなかった」のではなく「物理的に直せなかった」のであれば、それは所有者の怠慢ではなく、不可抗力の延長線上にあると言えるでしょう。お隣同士、感情的にならずに冷静な話し合いが求められます。

大規模な災害時は、誰が加害者で誰が被害者かという線引きが難しくなるものです。まずはご自身の加入している火災保険の「個人賠償責任特約」などを確認し、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。未曾有の事態だからこそ、法的な解釈を武器に、落ち着いて復旧への道を歩んでいきましょう。

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