東京電力福島第1原子力発電所事故以来、長きにわたり風評被害という厳しい試練に立ち向かってきた福島県産の米が、今、新たなステージへと踏み出します。その切り札となるのが、県が独自に開発した主食用の高級米と、高品質な酒造好適米という二つのオリジナル品種です。福島県は、これらの新品種の生産を本格的に開始し、「県産米の復興」という大きな目標に向けて、力強く動き出しているのです。
主食用米として期待を集めるのは、水稲品種の「福島40号」です。この品種は、福島県農業総合センターが2006年(平成18年)から研究開発を進めてきた、まさに英知の結晶と言えるでしょう。最大の特徴は、一般的なお米よりも大粒であること。さらに、強い甘みと、独特の芳醇な香り、そして口の中でとろけるような柔らかい食感を兼ね備えているのが魅力です。その品質の高さから、県は「県産米のトップブランド」として位置づけ、市場価格は2キログラムあたり1,000円を超える高価格帯での展開を見込んでいます。
そして、もう一つの注目株が、酒造りに特化した「福島酒50号」です。こちらは、日本酒の原料となるお米、すなわち酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)として、この2019年(令和元年)春から先行栽培がスタートいたしました。酒造好適米は、通常の食用の米とは異なり、粒が大きく、お酒の雑味の原因となるタンパク質が少なく、さらに米の中心にあるデンプンの塊「心白(しんぱく)」が大きいことが、高品質な日本酒を造るための条件となります。この新しい酒米を使用し、県内21の蔵元がさっそく醸造に挑んでいる状況です。来たる2020年(令和2年)春には、この酒米から生まれた新酒をお披露目するイベントが開催される予定で、日本酒ファンの熱い視線が注がれることは間違いないでしょう。
これらの新品種「福島40号」「福島酒50号」は、ただ栽培を広げるだけではありません。例えば「福島40号」の生産は、GAP(ギャップ、Good Agricultural Practice)と呼ばれる「農業生産工程管理」の第三者安全認証を取得するなど、定められた一定の厳しい条件をクリアした農家だけが許される限定生産体制を取ります。これは、消費者への「安全・安心」の約束であり、ブランド価値を最高水準に保つための、県の本気度が伝わる取り組みと言えるでしょう。農産物の安全性を確保し、環境に配慮した持続可能な農業を実践する証であるGAP認証を義務付けることは、福島の米に対する信頼を揺るぎないものにするための重要な一手です。
私自身の意見としては、この福島の挑戦は、単なる新品種の開発に留まらず、地域全体を巻き込んだブランド戦略の成功事例となる可能性を秘めていると見ています。技術開発に加え、品質管理の徹底、そしてトップブランドとしての高価格帯への挑戦は、風評に苦しんだ産地が自信を取り戻し、新たな経済的価値を生み出すための、模範的な取り組みになるはずです。SNSなどでも、「福島の新しいお米、絶対食べてみたい!」「福島の酒蔵が新しい酒米でどんなお酒を造るのか楽しみ!」といった期待の声がすでに上がり始めており、その反響の大きさから、消費者からの注目度の高さが窺えます。今後、この二つの品種名は、一般公募を経て正式に決定される予定で、その愛称がどのようなものになるのかも楽しみの一つです。
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