日本は111もの活火山がひしめき合う、世界でも類を見ない火山大国です。温泉などの豊かな恵みを享受する一方で、私たちは常に自然の脅威と隣り合わせで暮らしています。2014年の御嶽山や2018年の草津白根山で発生した噴火は、多くの尊い命を奪う痛ましい事態となりました。こうした背景を受け、東京工業大学で准教授を務める神田径氏は、電磁場を用いた独自の視点から、未だ謎の多い「水蒸気噴火」のメカニズムを解明しようと日夜研究に励んでいます。
SNS上では「登山を楽しむ身として、予測の難しさは本当に怖い」「最新技術で少しでもリスクが減るなら応援したい」といった声が上がっており、火山研究への関心はかつてないほど高まっているようです。神田氏が注目するのは、噴火の中でも特に予測が困難とされる水蒸気噴火の正体です。2018年1月23日に発生した草津白根山の噴火や、1995年の九重山における事象では、当初警戒されていた場所とは異なる地点で突如として火の手が上がりました。この予測不能な性質こそが、最大の課題といえるでしょう。
地下の正体を見破る最新技術「MT法」とは?
神田氏は、地下の構造を可視化するために「MT法」という高度な技術を駆使しています。これは、地磁気の変動によって生じる微弱な電流(電場)を地表で測定し、地下にある物質の「比抵抗」を算出する手法です。比抵抗とは、簡単に言えば「電流の通りにくさ」を示す尺度を指します。地下に存在するものがマグマなのか、あるいは水や岩石なのかによって、この電気の流れやすさは劇的に変化します。この値の違いを精密に分析することで、目には見えない地中の様子を手に取るように推定できるのです。
実際に、過去に何度も水蒸気噴火を繰り返している富山県の弥陀ケ原・地獄谷で調査を行ったところ、驚くべき事実が判明しました。地表のすぐ近くに、水や蒸気を一切通さない強固な「粘土層」が存在していたのです。この層がまるで瓶の「王冠(キャップ)」のような役割を果たし、その直下で高温・高圧の熱水が封じ込められている可能性が極めて高いことが分かりました。このエネルギーが限界を超えて一気に解放された瞬間、凄まじい水蒸気噴火へと発展するのではないかという仮説が浮上しています。
人工衛星「だいち」との連携で見えた噴火の予兆
神田氏の研究は、地上での観測に留まりません。国土地理院の協力のもと、人工衛星「だいち」から得られたデータを解析し、地面のわずかな動きを監視しています。驚くべきことに、地中の「キャップ」となっている層の中心部と、地面が隆起する中心点がぴったりと一致していることが明らかになりました。同様の構造は神奈川県の箱根山・大涌谷でも確認されており、噴火のリスクを評価する上で、この「通しにくい層」の特定が決定的な鍵を握っていることは間違いなさそうです。
しかし、火山研究の道は平坦ではありません。栃木県の那須岳では、同様のキャップ層が見つからず、どのようなプロセスで水蒸気が蓄積されるのか未だ謎に包まれています。地下で水蒸気が発生しても、最終的に何が「最後の一押し」となって噴火を引き起こすのか、その具体的なきっかけについても解明を待つ状態です。それでも、地下構造を詳しく知ることで「どこが危ないか」を特定する技術は着実に進歩しています。神田氏の挑戦は、私たちの安全な未来を築くための大きな一歩となるでしょう。
編集者の視点として、私はこの研究に大きな希望を感じます。自然の力を完全に制御することは不可能かもしれませんが、科学の目を持つことで「正しく恐れる」ための地図を手に入れることができるからです。特にレジャーとして登山を楽しむ層が増えている現在、こうしたリアルタイムの科学知見が一般に広く共有されることは、人命を守るための最良の防波堤になるはずです。神田氏が挑む地下の可視化は、単なる学術研究を超え、火山と共に生きる日本人にとって不可欠な知恵となると確信しています。
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