日本中を震撼させた千葉県野田市の小学4年生、栗原心愛(くりはらみあ)さんが父親からの暴力により命を落とした痛ましい事件において、大きな動きがありました。千葉県は2020年1月28日までに、虐待を防ぐことができなかったとして、柏児童相談所の現所長と前所長の2人を「文書訓告」の処分にすることを決定したのです。この処分に対して、世間からは様々な意見が噴出しています。
今回の処分理由の背景には、2019年11月に県の検証委員会が提出した報告書が大きく影響しているでしょう。報告書では、心愛さんが一時保護されていた際、医師から「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」と診断されていた事実が明かされました。PTSDとは、強い恐怖やショックを伴う経験がトラウマとなり、事件の後も激しい不安やフラッシュバックに苦しめられる精神的な症状のことです。
それほど深刻な状態であったにもかかわらず、児童相談所が一時保護を解除してしまった判断は、多くの人々から厳しい批判を浴びています。柏児相は前所長が在職していた2017年11月に彼女を一時保護したものの、翌月12月には解除していました。そして2018年4月に所長が交代して以降は、心愛さんとの直接の面会すら行われないまま、2019年1月に対処を誤った末の悲劇が起きてしまったのです。
県は今回の処分について、実際に現場で担当していた児童福祉司らは対象とせず、組織のトップである所長のみの責任を問う形を選びました。記者会見に臨んだ県総務課の副課長は、他自治体の事例を参考にしつつ、当時の対応を総合的に考慮した結果であると説明しています。しかし、この身内に甘いとも受け取れる対応に、SNS上では「処分が軽すぎる」「子供の命が失われた重さにまるで見合っていない」といった怒りの声が溢れかえりました。
一方で、この事件を巡っては学校側の対応も深刻な問題として浮き彫りになっています。心愛さんが父親からの暴力を必死に訴えた学校アンケートのコピーを、野田市教育委員会が加害者である父親に渡していたことが発覚したのです。これを受けて野田市側は、2019年3月に直接手渡した担当職員を停職6ヶ月とするなど、関係者計12人に対して厳格な懲戒処分を下しています。
市側が厳しい姿勢を見せたのに対し、今回の県の「文書訓告」という判断には大きな疑問が残ると言わざるを得ません。文書訓告とは、法令違反に対する懲戒処分ではなく、組織内での「注意・戒告」にとどまる比較的軽い措置なのです。しかも、処分された前所長は現在、別の児童相談所で再び所長という要職を務めているという現実に、組織としての危機管理意識の低さを感じずにはいられません。
児童相談所は、傷ついた子どもたちにとって最後の砦であるべき場所です。現場の負担軽減はもちろん不可欠ですが、保身や前例踏襲を優先するような組織体制のままでは、悲劇を繰り返してしまうのではないでしょうか。大人の都合や怠慢によって小さな命が切り捨てられる社会を決して許してはならず、今こそ児相の権限と責任のあり方を根本から見直す時が来ています。
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