学生時代の勉強机でお馴染みだった、穴の開いたノート用紙「ルーズリーフ」が今、働く世代の間で劇的な進化を遂げていることをご存じでしょうか。文具メーカーのマルマン株式会社が1968年に学生向けの便利アイテムとして世に送り出して以来、長年愛されてきたこの文房具が、現代のビジネスパーソンの心をつかんで離しません。
その熱狂ぶりを象徴するのが、2019年に東京・銀座の有名文具店「伊東屋」で1週間にわたり開催された「大ルーズリーフ博」です。会場に並んだのは同社のバインダーとリフィル(差し替え用の専用紙)のみという特化型のイベントでしたが、なんと約3000人もの人々が来場しました。限定品を含む149種類ものアイテムが並んだ会場は、大盛況となりました。
SNS上でもこのイベントは大きな話題を呼び、「懐かしのルーズリーフがこんなにお洒落になっているなんて」「種類が多すぎて目移りする」といった歓喜の声が溢れています。単なる学生の勉強道具という枠を飛び越え、洗練された大人の趣味や仕事の相棒として、その価値が再評価されている様子がリアルな口コミからもビシビシと伝わってきます。
人気の秘密は、カスタマイズ性の高さにあります。現在のリフィルは一般的な横線だけでなく、細かなドットが並んだ「ドット方眼」や、予定管理に便利な週単位・月単位のスケジュール帳、さらにはカードを収納できるポケットまで存在します。まさにユーザーの好みに合わせて中身を自由に組み合わせられる、至高の便利ツールへと深化しているのです。
ただし、大人が選ぶサイズには変化が見られます。学生時代はB5サイズが主流でしたが、社会人の間では一回り小さいA5サイズに人気が集中しています。これは、ビジネスシーンで一般的なA4サイズの書類を2つ折りにした際、すっきりと収まる絶妙な大きさだからでしょう。この需要を捉え、同社が刷新した働く女性向けのブランド「ジウリス」も、あえてB5を排除してA5サイズのみを展開するという大胆な戦略を打ち出しています。
なぜ、これほど大人の間でブームが起きているのでしょうか。1つは、学生時代から使い慣れた快適さをそのまま社会に出てからも引き継いでいる点です。そしてもう1つ、個人的に注目したいのが昨今の「システム手帳」の再流行との連動です。中身を用途に合わせて自由に入れ替えられるという共通の利便性が、大人たちの物欲を刺激していると考えられます。
さらに一歩踏み込んで考察すると、現代人の生活に不可欠なスマートフォンやパソコンの普及も影響していると私は睨んでいます。基本となるシステム(OS)に対して、自分の生活様式に合うアプリを導入していく感覚は、まさにバインダーという土台に好みのリフィルを組み込んでいくルーズリーフの構造そのものと言えるでしょう。
デジタルとアナログは対立するものと語られがちですが、実はアナログな文房具がデジタル機器の思想に近づいている現象は非常に興味深いと感じます。自分の手で触れて並び替えられるルーズリーフは、効率化が進む現代社会だからこそ、五感を刺激する仕事のパートナーとして選ばれているのです。今後もこうした「スマホ化」する文具から目が離せません。
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