スーパーマーケット業界で今や全国的な注目を集めるヤオコーの躍進は、ある一つの店舗の大改装の成功から始まりました。そのお店こそ、1998年6月28日に生まれ変わった狭山店(埼玉県狭山市)です。この大改装は、その後のヤオコーの店舗設計や売り場づくりの出発点となり、現在までにオープンした100を超える新店や数々の改装店舗の原点として、大きな影響を与えています。
狭山店で試みられた新しい手法、例えば、まるで市場にいるかのようなにぎわいのある青果売り場、調理の様子が見える鮮魚や総菜のオープンキッチン、お客様の食の悩みを解決するクッキングサポートコーナー、そして店内で飲食できるキッチンカフェ(イートインコーナー)などは、当時としては非常に先進的な取り組みでした。この画期的な店づくりは多くの方々から高い評価を受け、ヤオコーは、この時をもって食品スーパー業界での地位を一気に全国区へと押し上げることになったのです。
この高い評価をさらに確固たるものにしたのが、2003年にオープンした川越南古谷店(埼玉県川越市)です。この店舗では、それまでのヤオコーの店づくりの基本であった**「ライフスタイルアソートメント型スーパーマーケット」に、さらに「ミールソリューションの充実」**という新たな要素が加えられました。ライフスタイルアソートメントとは、お客様の豊かな食生活を実現するために、単においしいものを豊富に品ぞろえし、お求めやすい価格で提供するだけでなく、生鮮食品やデリカ(お惣菜)の魅力でお客様を惹きつける店づくりを目指す考え方です。
しかし、ただ良い品を揃えるだけでは、お客様の満足を完全に得られないことが分かってきたのです。多くのお客様は、「今日のおかずをどうしよう」という日々の献立の悩みさえ抱えています。そこで、お客様の豊かで楽しい食生活を具体的に実現するためのお手伝い、すなわち**「ミールソリューション(食事に関する問題解決)」**を提供できる店舗を目指すことになりました。これは、お客様が抱える食の課題や問題を解決に導くための提案や商品提供を行うという、極めて消費者目線に立った考え方です。
この革新的な店づくりは、当時の第4次中期経営計画に基づいて大きな方針が示され、当時の店舗企画部長であった伊東良雄さんが、開業時の店長である小沢三夫さん(現取締役営業企画部長)と綿密に議論を重ねながら、店舗レイアウトや売り場づくりの計画を練り上げました。もちろん、この議論には多くの社員が加わり、それぞれの意見が反映されています。トップが大きな方向性を示すだけで、詳細な実行は社員の主体性に任せるというヤオコーの社風が、この革新を可能にしたと言えるでしょう。
川越南古谷店は、ヤオコーがこれから目指す方向性を示す旗艦店として、大きな期待が寄せられました。新しい試みとして、売り場をゾーンという概念で区切りレイアウトを工夫したり、生鮮とデリカが一体となった売り場を実現したり、部門の垣根を越えた**サラダコーナー(サラダステーション)を設置するなど、多くの革新的な売り場づくりが試みられました。また、この店舗から初めて品ぞろえされた商品も数多く開発されており、狭山店に次ぐエポックメーキング(画期的な)**な店舗になったと言えるでしょう。
🎁名物「手握りおはぎ」誕生秘話とスーパー業界への波及
この南古谷店で新しく開発され、今やヤオコーの名物商品として、ほぼ全店で販売されているのが**「手握りおはぎ」です。この商品の開発は、小沢さんたちが自店の品ぞろえについて話し合っている時、仙台市郊外の秋保温泉にある「主婦の店 さいち」**さんが、1日に5,000個ものおはぎを販売しているという話題が出たことがきっかけとなりました。これを聞いた小沢さんたちは、「ぜひうちでも、それほどまでにお客様に愛されるおはぎを売りたい」と熱望されたそうです。
幸運なことに、ご縁があってさいちさんから作り方を教えていただけることになり、総菜部門の主任を含む3人のメンバーが、見習いとして現地へ向かいました。彼らはさいちの社長の奥様である専務から数日間、直接指導を受け、帰京後、試行錯誤を繰り返しながら、なんとか川越南古谷店の開業に間に合わせたのが、この伝説の「手握りおはぎ」なのです。このエピソードから、ヤオコーの品質へのこだわりと、熱意が伝わってきます。
川越南古谷店がオープンすると、その革新的な店づくりと商品力から、同業者による視察が店長が頭を抱えるほど殺到しました。特に「手握りおはぎ」の成功は瞬く間に知れ渡り、その結果、「手握り」や「手作り」といったネーミングのおはぎを販売するスーパーが、全国で相次いで出現することになりました。これはヤオコーの成功が、スーパーマーケット業界全体に与えた大きな反響を示しています。もちろん、ヤオコーはもちろんのこと、全国のスーパーで販売されるおはぎのブームの元祖は、仙台の「さいち」さんであることに間違いはないでしょう。
臨場感あふれる売り場と、お客様の食生活を豊かにするミールソリューションを追求したヤオコーの店舗は、お客様の日常に寄り添い、食の楽しみを提供し続けています。この成功の裏側には、常に新しい挑戦を恐れず、社員の主体性を重んじる企業姿勢があったと言えるのではないでしょうか。
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