2019年6月28日(現地時間)、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)が報じたところによりますと、Apple(アップル)がこの年の秋に発売を予定している新型の高性能パソコン**「Mac Pro(マックプロ)」について、製造拠点を中国に移すという驚くべきニュースが飛び込んできました。これまで旧型のMac Proは米国国内で組み立てられていましたが、この新型では、台湾の企業である広達電脳(クアンタ・コンピュータ)に生産を委託し、上海(シャンハイ)近郊の工場で製造が開始されている模様です。
この生産地変更の背景には、中国国内の他の部品供給業者、つまり「サプライヤー」との地理的な距離が近いことで、製品の運送にかかる費用、すなわち「輸送コスト」を抑制できるという経済的なメリットがあるようです。Mac Proは、Appleのパソコンラインナップの中でも最高峰に位置するモデルであり、その価格は一台あたり5,999ドル(日本円にしておよそ65万円)からという、非常に高価な設定となっています。主に映画制作やゲーム開発といった専門的な業界のプロフェッショナルを対象とした「ハイエンド機種」であり、販売台数という点では、主力製品(「フラッグシップモデル」)とは言い難いでしょう。
今回の報道を受けて、SNSなどでは、その高額な価格設定から「全部盛り」の最上位スペックでカスタマイズした場合の価格が、日本円で500万円を超えるのではないかという試算が大きな話題を集めています。また、米中間の貿易摩擦が激化する中で、Appleが下した「米国からの生産地変更」という決断に対して、驚きや、今後の動向を懸念する声も多く見受けられます。プロ向けの最高性能を誇る製品であるだけに、その製造工程やサプライチェーン(供給網)の変更は、業界内外で強い関心を集めていると言えるでしょう。
Appleの広報担当者は、この決定に対し、製品の「最終的な組み立て」は製造プロセス全体のごく一部にすぎないとの見解を示しています。そして、引き続き米国における雇用を支え続けているという姿勢を強調しました。これは、米国での製造にこだわる姿勢から、コスト効率を優先したとも受け取れる今回の動きに対する、Apple側からの配慮と説明責任を果たそうとする意図が垣間見えるでしょう。
しかしながら、このニュースが報じられた2019年6月29日というタイミングは、米中間での貿易交渉が重大な局面を迎えている最中でした。米国は中国から輸入されるすべての製品に対し、最大で25パーセントの追加関税を課す可能性を示唆しており、この日に行われる予定の米中首脳会談で、その関税が発動されるかどうかが最大の焦点となっているのです。もしこの追加関税が発動されてしまえば、中国で生産されたApple製品を米国に輸入する際にも、高額な関税が上乗せされるという重大なリスクが浮上してくるでしょう。
ドナルド・トランプ米大統領は、かねてよりAppleに対して、主力製品である「iPhone(アイフォーン)」**などの製品を、米国国内で生産するように繰り返し強く求めてきました。今回のMac Proの中国生産への切り替えは、Appleのグローバルな生産戦略における合理的な判断でしょうが、米中間の貿易摩擦というデリケートな政治的背景を考慮すると、そのタイミングと判断は、非常に大胆なものだと私は考えます。経済的な合理性を追求する企業戦略と、国家間の政治的な緊張という、二つの大きな力が複雑に絡み合う状況は、今後のAppleの動向、ひいては世界のサプライチェーン全体に大きな影響を与えるかもしれません。
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