2019年6月29日の東京商品取引所では、原油先物市場が前日の上昇から一転して反落する展開となりました。中心限月の清算値は1キロリットルあたり4万1350円と、前日と比べて200円安を記録しています。この背景には、週末に控えた米中首脳会談に対する市場の慎重な見方と、協調減産の継続期待という二つの大きな材料が複雑に絡み合っていたと言えるでしょう。
市場では、石油輸出国機構(OPEC:オペック、原油の生産調整を通じて市場への影響力を持つ14カ国の産油国による国際組織のことです)と非加盟の主要産油国による「OPECプラス」が、原油価格の安定を図るための協調減産(市場に供給される原油量を減らすことで価格を押し上げる生産調整のことです)を継続するとの期待感から、前日の海外原油相場は上昇していました。特に、クウェート石油相が「今年後半も協調減産を続ける方向だ」と発言するなど、OPEC加盟各国の閣僚から減産継続を支持する発言が27日に相次いだことで、市場では朝方こそ買いが先行する動きが見られたのです。
しかし、こうしたOPECプラスの思惑とは別に、市場参加者の視線は別の大きなテーマに注がれていました。それが、アメリカと中国の貿易摩擦(国家間で関税の引き上げや輸入制限などの報復的な措置を取り合う経済的な対立のことです)です。週末に両国の首脳会談が予定されていたものの、「関税の撤廃など、実体経済にインパクトを与えるような具体的な進展が得られるまでには、まだ時間がかかるだろう」という、楽天証券の吉田哲コモディティアナリストのような慎重な見方が上値を抑える格好となりました。米中間の協議の行方は、世界経済の成長見通し、ひいては原油の需要動向に直結するため、市場の関心は極めて高かったのです。
さらに、為替市場が円高方向に振れたことも、円建てで取引される東京市場の原油価格にとっては弱材料となってしまいました。また、前日のニューヨーク原油相場が、心理的な節目とされていた1バレル60ドルを明確に超えることができなかった点も、国内市場の重しになったと見られています。SNSなどでの市場関係者の反応を見ても、「OPECの思惑よりも米中協議のリスクを警戒する声が多い」「60ドルの壁は厚い」といった、リスクオフ(投資家が不確実な状況を避け、リスクの低い資産に資金を移す動きのことです)を意識した慎重な意見が目立っています。
私見として申し上げれば、原油市場はまさに綱引き状態にあると言えます。一方は需給の引き締めを狙うOPECプラスという供給サイドの意図、もう一方は需要の伸びを左右する世界経済の不透明感、特に米中貿易摩擦という需要サイドの懸念です。この状況下では、協調減産による一定の下支え効果は期待できるものの、市場全体を押し上げるほどの勢いを生むためには、米中協議で市場が安心感を持てるような「実質的な進展」が不可欠でしょう。目先の価格動向よりも、世界最大の原油消費国である中国の経済成長を阻害する要因が取り除かれるかどうかが、今後の原油先物価格の鍵を握ると言えるでしょう。
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