スイスに本拠を置く世界的エンジニアリング大手のABBが、日本国内において塗装用ロボットの技術提案を大幅に強化しています。同社は2019年07月06日、静岡県島田市にある技術開発拠点「ABBテクニカルセンター」にて、最新のロボット技術と塗装関連ソリューションを披露する記者向け説明会を開催しました。これまで職人の勘や経験に頼らざるを得なかった高度な塗装技術を、最先端のテクノロジーでデジタル化しようとする試みに、業界内外から熱い視線が注がれています。
今回の目玉となるのは、新開発されたシステム「SRP」です。これは赤外線レーザーと専用のコントローラーを活用することで、熟練工が実際に作業する際の手首の動きや角度などのデータを精密に収集する仕組みです。特筆すべきは、取り込んだデータをロボットが即座に再現できる点にあります。SNS上でも「ついに職人の技がコピーされる時代が来たのか」「人手不足に悩む地方の工場にとって救世主になるかもしれない」といった、驚きと期待の入り混じった声が数多く寄せられています。
この技術がもたらす最大のメリットは、生産準備にかかる時間の圧倒的な短縮でしょう。従来、ロボットに新しい動作を教え込む「ティーチング」という作業には、専門の技術者が丸一日がかりで調整を行うことも珍しくありませんでした。しかし、このSRPを導入すれば、わずか数十分程度で設定が完了するとされています。専門的な知識がなくても直感的にロボットへ動きを伝達できるため、自動化のハードルが劇的に下がることが予想されます。
IoTと熟練の技が融合する次世代のモノづくり
ABBは現在、あらゆる機器がインターネットを介してつながる「IoT(モノのインターネット)」機能を搭載した塗装ロボットの展開も加速させています。これにより、稼働状況のリアルタイム監視や故障の予兆検知が可能となり、工場の生産性を止めることなく最適化できるのです。単なる機械としてのロボットではなく、知能を持ったパートナーとして進化を遂げている点は、まさに現代のスマートファクトリーを象徴する動きだと言えるのではないでしょうか。
同社の戦略の背景には、大きな事業構造の転換があります。ABBは2018年に主力であった送配電事業を日立製作所へ売却することを決断し、経営資源をロボティクス事業へ集中させる方針を鮮明に打ち出しました。ロボティクス事業部の中島秀一郎事業部長は、日本市場の重要性がかつてないほど高まっていることを強調しており、得意の塗装分野を足がかりに、国内でのシェア拡大に並々ならぬ意欲を燃やしています。
日本は安川電機やファナックといった強力なライバルがひしめく、いわば「ロボット王国」のお膝元です。しかし、ABBが狙いを定めるのは、家具や住宅設備といった多品種少量生産が求められる分野の自動化です。私自身の見解としては、画一的な大量生産ではなく、個々の職人芸をデジタル資産として保存し、それを柔軟に再現できるこのシステムこそが、日本のものづくり現場が抱える後継者不足という深刻な課題に対する一つの正解になると確信しています。
熟練の技を「記憶」し、それを「即座に実行」できる技術は、単なる効率化の道具に留まりません。それは、長年培われてきた日本の伝統的な技術を次世代へと確実に受け継ぐための、新しい形の「技能伝承」の手段でもあります。2019年07月06日の発表を機に、ABBが提供する革新的なソリューションが、日本の製造現場をどのように塗り替えていくのか。外資系メーカーによる「お膝元」への挑戦は、今後さらに加速していくに違いありません。
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