2019年07月06日、金融業界に一石を投じる革新的な一冊が世に送り出されました。東京海上アセットマネジメントの運用本部長を務める平山賢一氏による著書は、戦前・戦時期の金融市場を、現代のファイナンス理論という新たなレンズで徹底的に分析した力作です。歴史の霧に包まれていた当時の市場の実態が、プロの知見によって鮮やかに浮かび上がっています。
本書の特筆すべき点は、国債や株式のパフォーマンスを「マクロ的指標」として厳密に数値化したことにあります。これは、単に当時の様子を振り返るだけではなく、経済全体における資金の流れを科学的に解明しようとする試みと言えるでしょう。専門用語としての「マクロ的パフォーマンス」とは、個別の銘柄ではなく市場全体の成績を指し、これを用いることで統制経済の真の姿が浮き彫りになりました。
当時の国債市場では、政府による価格統制が敷かれていました。通常、金利が低い国債は投資家にとって魅力が薄いものですが、平山氏は「リスクが極限まで抑えられていたため、銀行が投資することは合理的だった」という新説を唱えています。これは、「無理やり買わされていた」という従来のイメージを覆す驚きの指摘です。SNS上でも「戦時中の方が合理的な投資判断が働いていたのか」と、知的好奇心を刺激される読者が続出しています。
1940年代と現代を繋ぐ大胆な視点
著者が展開する主張の中で、最も私たちの心を揺さぶるのは1940年代と2010年代の金融市場を対比させた議論ではないでしょうか。戦時下という極限状態においても、意外にも民間銀行の機能は一定の強さを保っていました。対照的に、2019年現在の日本ではマイナス金利政策などの影響により、銀行が本来持つべき「資金の仲介役」としての能力が、当時よりも弱体化していると警鐘を鳴らしています。
「仲介機能」とは、預金者から集めたお金を、成長が見込める企業へと効率的に届ける橋渡しの役割を指します。この機能が失われれば、国全体の経済循環が止まりかねません。戦時下の統制よりも、現代の過度な金融緩和の方が市場の体力を奪っているのではないか、という大胆な仮説は非常に重い意味を持っています。私は、この視点こそが、未来を予測するための重要な鍵になると確信しております。
金融のプロフェッショナルが、学問的な緻密さを持って「歴史の鏡」に現代を映し出した本作は、単なる歴史書ではありません。2019年という不透明な時代を生きる私たちにとって、銀行や市場がどうあるべきかを問い直す貴重な指針となるはずです。一橋大学の寺西重郎名誉教授も絶賛する本書は、経済の専門家だけでなく、賢明なビジネスパーソンであれば必読の価値があるでしょう。
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