2019年6月5日現在、長野県内に拠点を置く上場企業の株価が、東京証券取引所(東証)全体と比べても、厳しい状況にあります。特に東証1部に上場している県内企業を対象とした調査では、約7割が同時期の日経平均株価の上昇率を下回るという、憂慮すべき結果が明らかになったのです。この株価の軟調ぶりは、米中貿易摩擦の激化など、世界経済の不透明感に強く影響されていると言えるでしょう。
この状況は、県内企業の多くが製造業、それも時価総額が比較的小さい中小型株で占められている構造的な背景と無関係ではありません。景気の減速懸念が強まると、投資家の資金はリスクを避け、安定性が高い大型株や、ディフェンシブな業種へと流れがちです。八十二証券の東城幸彦投資情報部部長が指摘するように、「精密・電子部品関連の中小型株が多い県内の上場株は投資家に嫌気されがち」な傾向は、まさにこの流れを象徴しているでしょう。
具体的に、2018年末から2019年5月末までの騰落率を見てみると、日経平均株価が3%の上昇を見せたのに対し、調査対象の県内1部上場企業23社のうち、16社がこの水準を下回りました。これは東証株価指数(TOPIX:東証1部上場企業の全銘柄を対象とする指数)に対しても同様の傾向が見られ、県内企業にとって厳しい市場環境となっていることが裏付けられます。
特に下落率が目立ったのは、産業用インクジェットプリンターを手掛けるミマキエンジニアリングで、約3割の大幅な下落となりました。これは、2020年3月期の連結営業利益見通しが、前期比で29%減となる21億円と発表されたことが響いています。主力のプリンターは新製品が伸びるものの、為替の円高進行などを織り込み、減益を見込んだことが投資家の失望売りを誘い、見通し発表の翌営業日である5月13日の終値では前営業日比で7%安を記録しました。また、計測器大手のHIOKIも、19年12月期の増益見通しにもかかわらず、1~3月の利益が市場期待に届かなかった点や、米中摩擦に絡む電子部品関連銘柄として避けられる傾向から、2%安となっています。
株主総会を前に高まる懸念と、企業価値を示す指標「PBR」の課題
製造業以外にも、銀行や建設業など、幅広い業種で市場全体を下回る値動きが確認されています。この株価低迷は、6月中旬以降に株主総会を控える企業が多い中で、株主からの厳しい質問や、株価対策を求める声が高まる要因となり得るでしょう。企業は単に業績を上げることだけでなく、市場との対話を通じた適切な企業価値の評価が求められています。
ここで注目したいのが、PBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)です。これは株価が1株あたりの純資産(企業の解散価値)の何倍になっているかを示す指標で、1倍割れは「企業が持っている資産をすべて売り払ったとしても、株価の方が安い」ということを意味し、市場から企業価値を低く見られている状態を示します。長野県内の上場企業では、半数近い11社がPBR1倍を割っており、東証1部全体の平均1.12倍と比較しても、約7割の企業がこの平均を下回っている状況です。この数字は、多くの県内企業が本質的な企業価値を市場に十分に理解されていない可能性を示唆しており、私としても非常に危機感を持つべき指標だと考えます。
逆境を跳ね返す!ニッチ分野で光る「独自サービス」の強み
一方で、市場全体が低調な中でも、独自のサービスを強みとして業績を伸ばし、株価を堅調に推移させている企業も存在します。その代表例が、介護サービスを手掛けるエランと、建設業向け支援サービスのシーティーエス(CTS)です。エランは、国内の高齢化という避けられない社会背景を追い風に、主力の介護医療関連サービスが好調で、約4割という驚異的な株価上昇率を記録しました。
また、CTSは、建設業界の人手不足を背景としたデジタル化のニーズを捉え、ICT(情報通信技術)関連サービスを提供しています。このように、ニッチ分野で確かな需要を掴み、収益を着実に上げている企業は、投資家の注目を集め、逆境でも資金を呼び込んでいるのです。この明暗の分かれ目は、世界経済の波に左右されにくい独自性の高いサービスや、特定の課題を解決する専門性が、今の投資環境においていかに重要かを示していると言えるでしょう。県内企業全体が、この成功事例から学び、独自の強みを研ぎ澄ますことが、今後の株価回復のカギを握ると私は確信しています。
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