2019年08月26日現在、東北の秋田県から世界中の時計愛好家を熱狂させる、非常にエキサイティングなニュースが飛び込んできました。羽後町に拠点を置く切削工具・高級腕時計メーカーの協和精工が、自社ブランド「MINASE(ミナセ)」の海外展開を劇的に加速させているのです。2019年内にはドイツのデュッセルドルフで販売を開始し、続く2020年にはイギリスのロンドンやスイスのチューリヒへと、その勢力図を広げる計画が着々と進められています。
この「MINASE」という名は、時計工房が位置する秋田県湯沢市の皆瀬地区に由来しており、2005年に産声を上げたブランドです。彼らの時計を唯一無二の存在にしているのが、「ザラツ研磨」と呼ばれる究極の下地処理技術でしょう。これは、高速回転する円板に職人が部品をミリ単位の感覚で押し当て、歪みのない完璧な鏡面を作り出す技法を指します。熟練の技術が必要なため、一度その輝きを目にすれば、吸い込まれるような美しさに圧倒されるはずです。
伝統の「組み木」が叶える一生モノの構造と新作の輝き
さらに注目すべきは、日本の伝統工芸である「組み木細工」に着想を得た独自の構造を採用している点です。通常の時計は部品が一体化されていますが、彼らはパーツを細かく分解できる仕組みを開発しました。これにより、傷んだ箇所だけを交換・修理することが可能となり、まさに「一生もの」として愛用できる持続可能な価値を実現しています。SNSでも「この精密さはもはや芸術品の域だ」と、日本の職人魂を絶賛する声が次々と上がっているようです。
2019年10月25日から2019年10月27日にかけて開催される展示会「ウォッチタイム・デュッセルドルフ・ショウ2019」では、待望の新作がお披露目されます。人気シリーズ「DIVIDO(ディヴァイド)」に加わる新色は、水墨画のような静寂を感じさせる黒のグラデーションが施されました。税抜き34万円という価格設定ですが、一点ずつ手作業で仕上げられる手間を考えれば、時計ファンにとってこれほど魅力的な選択肢はないでしょう。
欧州での快進撃は止まる所を知りません。2019年春のフランス・パリへの進出を皮切りに、今後は中国やシンガポールといったアジア諸国の富裕層もターゲットに据えています。2019年9月期の海外販売本数は、2017年9月期と比較してなんと10倍にまで急増する見込みだそうです。世界中の人々が、秋田の小さな町で職人が丹精込めて作り上げた時計の価値に、ようやく気付き始めたと言っても過言ではないでしょう。
編集部としては、この挑戦こそが日本の「ものづくり」が進むべき理想の形だと確信しています。大量生産に走らず、年間600本という限られた生産数の中でこだわりを抜く姿勢には、深い敬意を表さざるを得ません。地方から世界へ直接勝負を挑むその姿は、多くの日本人クリエイターに大きな勇気を与えるはずです。秋田の雪深い地で磨かれた至高の輝きが、世界の街角で時を刻む日が本当に楽しみでなりません。
コメント