現代社会において、データは「21世紀の石油」とも称されるほど重要な資源となっています。2019年09月30日、筑波大学の川島宏一教授は、行政が保有する情報を市民や企業に開放する「オープンデータ」の真の意義について、極めて興味深い視点を提示されました。単に情報を公開するだけでなく、社会全体で新たな価値を創造しようとする世界的な潮流が、今まさに私たちの生活を根底から変えようとしています。
「オープンデータ」という言葉を聞くと、単にネット上で見られる資料のことだと考えがちですが、本質的には「オープン・ガバメント・データ・ムーブメント」という世界的な運動を指します。これは、税金によって蓄積された膨大な公共データを、コンピューターが直接読み取って処理できる「機械判読可能」な形式で公開する取り組みです。営利・非営利を問わず、誰もが自由に二次利用できる環境を整えることが、この運動の核心といえるでしょう。
なぜ今、これほどまでにデータの開放が叫ばれているのでしょうか。その背景には、インターネットの爆発的な普及があります。誰もが指先一つで世界中の情報にアクセスできる時代になったにもかかわらず、市民生活に密着した行政データだけが、長らく閉ざされた領域に取り残されてきました。デジタル化によって複製や送付のコストがほぼゼロになった現在、公的な資産であるデータを広く共有してほしいという要望が高まるのは、至極当然の流れです。
SNS上でもこの動きは大きな注目を集めており、「行政のブラックボックスが透明化される」「眠っているデータが宝の山に変わる」といった期待の声が数多く寄せられています。特に、民間企業が自社のノウハウを外部と共有して革新を起こす「オープン・イノベーション」の手法を公共分野に応用する考え方は、閉塞感のある経済状況を打破する一石として、多くのビジネスパーソンから支持を得ているようです。
倒産危機を救った奇跡の公開!「ゴールドコープ」に学ぶデータの力
川島教授は、データ開放がもたらす劇的な成功例として、カナダの鉱山会社「ゴールドコープ」のエピソードを挙げています。かつて倒産の危機に瀕していた同社は、本来ならば社外秘であるはずの地質データをあえてインターネット上で全公開するという、当時としては極めて異例の賭けに出ました。さらに、新しい金鉱脈の場所を予測した者に賞金を与えるというコンテストを開催し、外部の知恵を広く募ったのです。
この大胆な試みは、予想を遥かに上回る結果をもたらしました。世界中から寄せられた回答によって、なんと110カ所もの鉱脈候補が特定されたのです。驚くべきことに、そのうち80%から実際に金が採掘され、同社は倒産危機を脱するどころか、業界屈指の高収益企業へと華麗な転身を遂げました。これは、組織内部の人間だけでは気づけなかった価値が、データの開放によって外部の視点と結びつき、莫大な利益を生んだ象徴的な事例です。
私は、このオープンデータの推進こそが、現代の日本における「官民連携」の究極の形であると考えます。これまでの行政は情報を抱え込むことで権威を保ってきましたが、これからは情報を手放すことで価値を生む時代です。2019年09月30日時点の視点で見れば、未開拓の公共データには、民間セクターのそれを上回るイノベーションの種が眠っているはずです。この「公共の知」を解放することが、私たちの未来を豊かにする鍵となるでしょう。
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