中東情勢に大きな転換点が訪れました。2019年11月10日、ヨルダン政府は1994年にイスラエルとの間で締結された平和条約に基づき、これまでイスラエル側に認めていたヨルダン領土の貸与契約を更新せず、25年間の期限をもって終了させたのです。
ヨルダンのアブドラ国王は同日、イスラエルによる実質的な占有状態が幕を閉じ、自国の主権を完全に回復したことを力強く宣言しました。この決定により、長年イスラエル側が利用してきた国境沿いの2か所の農地は、再びヨルダンの管理下へと戻ることになります。
ここで注目すべきは「主権」という言葉の意味でしょう。これは国家がその領土内において、他国からの干渉を受けずに政治的な意思決定や統治を行う権利を指します。今回の宣言は、単なる土地の返還を超え、国家としてのプライドを取り戻した象徴的な出来事といえるはずです。
平和条約の例外的な措置と冷え込む両国関係
今回返還の対象となったのは、国境付近に位置する農地などを含む「バクーラ」と「アル・ゴムル」と呼ばれる地域です。1994年の平和条約締結時、ヨルダンはイスラエルにこの土地の25年間の使用権を与えましたが、その背景には当時の中東和平への強い期待が込められていました。
しかし、近年はパレスチナ問題を巡って両国の関係が悪化しており、ヨルダン国内でもイスラエルへの厳しい視線が強まっています。SNS上ではヨルダンの国民から「ようやく我々の土地が帰ってきた」「国王の英断を支持する」といった歓喜の声が次々と上がっており、国民感情が反映された結果とも見て取れます。
私は、この決断はヨルダンにとって避けては通れない道だったと考えています。周辺のアラブ諸国の中でも、イスラエルと国交を持つ数少ない国であるヨルダンが、あえて強硬な姿勢を見せたことは、地域のパワーバランスや今後の和平交渉に無視できない影響を及ぼすに違いありません。
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