2019年12月05日の国内債券市場では、久しぶりにプラス圏への復帰が期待されていた長期金利が、一転して押し戻される局面を迎えています。投資家の間では「そろそろゼロ%台に戻るのではないか」という楽観論が漂っていましたが、米中貿易摩擦の先行き不透明感という冷や水が浴びせられた格好です。
2019年12月04日、指標となる新発10年物国債の利回りは、一時マイナス0.060%まで低下しました。これはトランプ米大統領が中国との合意を急がない姿勢を示したことで、投資家がより安全な資産へ資金を逃がす「リスクオフ」の動きを強めたためです。SNS上でも「結局またマイナスか」「景気回復の実感が湧かない」といった嘆きが多く見受けられます。
期待された経済対策は「肩すかし」の結果に
金利上昇の決定打として期待を集めていたのが、日本政府による大規模な経済対策でした。世界的に「金融緩和」から、政府が直接お金を投じる「財政出動」へ主役が移りつつある中で、市場は日本の積極的な姿勢を注視していたのです。特に2019年11月下旬に「真水で10兆円規模」という景気の良い数字が報じられた際は、一時的に債券売りが加速しました。
ここで言う「真水(まみず)」とは、国が直接予算として支出する事業費のことで、景気刺激効果が最も直接的に現れる指標とされています。しかし、蓋を開けてみれば補正予算案の規模は4兆円台前半にとどまり、当初の期待からは程遠い内容となりました。これでは成長率の大幅な底上げを期待するのは、少し無理があるのかもしれません。
さらに、インフラ整備を柱に据えても、建設業界の深刻な人手不足が事業の進展を阻むという懸念も根強く残っています。いくら予算を付けても、実際に働く人がいなければ経済は回りません。この構造的な課題を解決しない限り、表面上の数字だけを積み上げた対策は、市場に見透かされてしまうでしょう。
国債増発の懸念後退と海外情勢への回帰
一方で、金利上昇のもう一つの要因となる「国債の増発」も現実味が薄れています。財務省はあらかじめ財源を確保しているため、今回の対策のために国債を乱発する必要がないからです。むしろ2020年度の市中発行額は減少するとの見方すらあり、債券の供給が増えて価格が下がる(金利が上がる)というシナリオは崩れつつあります。
結局のところ、日本の長期金利がプラス圏に定着するためには、国内の施策だけでは力不足だと言わざるを得ません。世界経済全体の不安が解消され、米中関係が劇的に改善しない限り、再び海外の動向に一喜一憂する日々が続くでしょう。個人的には、数字遊びの経済対策よりも、現場の労働力不足に直結するような抜本的な改革こそが、市場に真の活気をもたらすと確信しています。
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