近年、GAFAに象徴される革新的な聖地、シリコンバレーへの関心が日本国内でかつてないほど高まっています。最先端のベンチャー企業と手を取り合い、新たなビジネスの種を見つけようと多くの企業が海を渡っています。しかし、長年現地でコンサルタントを務めるロッシェル・カップ氏は、日本企業が陥りやすい「形だけの進出」に強い警鐘を鳴らしています。
象徴的な失敗の第一歩は、日本特有の文化である「見学」や「表敬訪問」にあります。実は、英語にはこれらを正確に表す言葉が存在しません。激しい競争に身を置く現地のスタートアップにとって、明確なゴールがない会議は時間の無駄でしかないのです。彼らは「展示物」になるつもりはなく、ビジネスの成否に直結する真剣勝負の対話を求めているのでしょう。
とりあえず拠点を構えれば道が開けるという考えも、注意が必要な落とし穴です。現地へ派遣されるスタッフに与えられるミッションが「情報収集」といった抽象的なものに留まっているケースが散見されます。これでは本社側の受け皿も機能せず、数年おきの人事異動によって、せっかく築き始めた現地の信頼関係がリセットされてしまうという悪循環が生まれます。
「イノベーション・シアター」という見せかけの罠
カップ氏が最も懸念しているのは、「イノベーション・シアター(イノベーションごっこ)」と呼ばれる現象です。これは、周囲からのプレッシャーに押され、中身を伴わないまま派手な提携や買収をアピールすることを指します。まるで演劇(シアター)のように、外部へ向けて「何かをやっている感」を演出しても、会社の核となる業務に変化がなければ意味がありません。
SNS上でも「日本の承認プロセスの遅さは致命的」「現地に丸投げでは何も変わらない」といった厳しい声が上がっています。2019年12月10日現在、シリコンバレーのスピード感と日本の伝統的な意思決定の間には、依然として深い溝が存在します。自前主義に固執し、過去の成功体験から脱却できないままであれば、巨額の投資も単なる「お祭り」で終わるでしょう。
真の変革を遂げるためには、外部と接触する前に、まずは自社の企業文化を見つめ直す勇気が必要です。新しいものを受け入れる柔軟性や、迅速な判断ができる体制が整っているでしょうか。編集部としても、形だけのパフォーマンスに満足せず、痛みを伴う自己変革こそが日本経済の再生に不可欠だと確信しています。内側からの意識改革こそが、成功への唯一の切符です。
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