日本のスポーツ界に、テクノロジーという新たな風が吹き込もうとしています。2019年12月17日、ソフトバンクと鹿屋体育大学は、ICT(情報通信技術)を駆使した離島の部活動支援に関する試験運用を開始したと発表しました。この試みは、地理的な制約によって専門的な指導を受けにくい離島の高校生たちを、最新のオンラインシステムでサポートする画期的なプロジェクトです。
今回の舞台となるのは、鹿児島県立徳之島高校の野球部です。彼らのパートナーを務めるのは、国立のスポーツ専科大学として名高い鹿屋体育大学の野球部員たち。プロ顔負けの理論を持つ大学生が、遠く離れた島で白球を追う高校生たちのコーチ役を担います。SNS上では「移動コストをゼロにする素晴らしい試み」「地方の格差を埋める一歩になる」と、期待の声が数多く上がっています。
指導の核となるのは、ソフトバンクが提供する「スマートコーチ」というオンラインレッスンサービスです。これは、インターネットを通じて場所を問わずに技術指導が受けられる仕組みを指します。生徒たちは普段の練習風景をタブレット端末で撮影し、専用のクラウドに動画をアップロードします。受け取った大学生側は、その映像を分析して課題を見つけ出し、アドバイスを送り届けます。
動画の添削には、非常に丁寧な工夫が凝らされています。映像の中に直接線を引いてフォームを矯正したり、音声やテキストで細かなニュアンスを伝えたりしたものが、翌々日までには高校生のもとへ返送されます。これならば、まるで現場にコーチがいるかのような感覚で練習に励めるでしょう。離島特有の「専門家が近くにいない」という悩みに対する、現代ならではの回答と言えます。
この取り組みは、教わる側の高校生だけにメリットがあるわけではありません。指導を担当する大学生にとっても、自分の知識を言語化して他者に伝える「コーチング技術」を実践形式で学ぶ貴重な機会となります。将来、指導者を目指す学生にとっては、これ以上ない学びの場です。双方が成長し合えるwin-winな関係性が、デジタルの力で構築されている点は非常に注目すべきポイントです。
地域格差を打ち破るICTの可能性
ソフトバンクはこれまで全国48もの自治体でICTを活用した部活支援を展開してきましたが、離島を対象にした実施は今回が初めてとなります。この試験運用は2020年3月末まで継続される予定で、その成果次第では鹿児島県内の他の離島への拡大も視野に入っているそうです。通信インフラが進化することで、日本のどこにいてもトップレベルの教育を受けられる時代が、いよいよ現実味を帯びてきました。
私自身の見解としても、このプロジェクトは単なる技術指導以上の意味を持つと感じています。少子高齢化や過疎化が進む中で、地方の教育環境を維持することは喫緊の課題です。ICTを活用して「指導者の不在」という壁を突破することは、子供たちの夢を諦めさせないために不可欠な一手となるでしょう。今後のスポーツ界において、ビデオ解析や遠隔指導は当たり前の風景になるに違いありません。
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