2019年12月20日、多くの人が抱える「継続」の悩みを脳科学の視点から解き明かす画期的な知見が注目を集めています。スポーツジムやダイエット商品など、世の中には多くのトレーニング系サービスが溢れていますが、実はリピーターが絶えないものと、すぐに飽きられてしまうものには明確な差が存在しているのです。
その鍵を握るのが、私たちの脳内に張り巡らされた「報酬系(ほうしゅうけい)」という神経ネットワークの働きに他なりません。報酬系とは、欲求が満たされた際や、特定の行動によって快感を得た時に活性化し、その行動を反復したくなる仕組みを指します。このメカニズムを理解することが、ビジネスの成否を分けると言えるでしょう。
私たちが達成感や喜びを抱く瞬間、脳の中枢にある「腹側被蓋野(ふくそくひがいや)」という部位から、ドーパミンという物質が放出されます。これはいわば「やる気スイッチ」をオンにする脳内伝達物質であり、私たちに心地よいワクワク感をもたらします。東北大学の筒井健一郎教授によれば、この快感物質を効率よく引き出す条件は大きく分けて3つあります。
ワクワクを最大化する「3つの報酬パターン」とは
まず1つ目は「不確実な喜びを期待している時」です。例えば2019年現在の宝くじ購入者が、当選するか分からないドキドキ感を楽しみながら夢を膨らませる状態がこれに当たります。2つ目は「予想外の幸運が舞い込んだ時」で、想定していなかった臨時収入やサプライズに遭遇した際、脳内は一気に高揚感で満たされます。
そして3つ目は「嬉しい出来事が確実に来ると分かっている時」です。退職後の海外旅行が決まり、3カ月後の出発を心待ちにしている予約済みの状態などが典型例となります。SNSでは「給料日前の高揚感の正体はこれだったのか!」といった驚きの声が上がっており、日常的な楽しみの裏側にある科学的根拠に納得するユーザーが続出しています。
こうした脳の特性を賢くビジネスに応用しているのが、女性向けジムの「カーブス」です。ここでは単に運動を提供するのではなく、利用者ごとに「いつまでにウエストを何センチ絞るか」といった具体的な目標を設定しています。ポイントは、現在の自分の能力よりも「わずかに高い水準」に設定することで、これが継続への強力なエンジンとなります。
さらに重要なのは、その目標が義務感による「ノルマ」になっていないかという点でしょう。ノルマと感じた瞬間に脳はストレスを受け、報酬系の活性化は止まってしまいます。同施設では「痩せたら山登りに行きたい」「同窓会で驚かれたい」といった、本人が心からワクワクする未来のビジョンを共有することで、ポジティブな動機づけを行っています。
未来の自分をデザインするスマートエイジングの知恵
脳科学や心理学をマーケティングに活用する試みは、2019年現在、東北大学スマート・エイジング・カレッジ東京などを通じて多くの企業へ広がっています。単なる根性論ではなく、人間が本来持っている「喜びを求める性質」をいかに刺激するかが、これからのサービス提供において不可欠な視点となることは間違いありません。
私自身の視点から述べさせていただくと、現代社会において「継続できないこと」を個人の意志の弱さのせいにするのは、もう時代遅れだと言わざるを得ません。仕組みとして脳を喜ばせる設計がなされているか、あるいは自分自身でその仕掛けを作れているか。これこそが、人生をより豊かに、そして健康に変えていくための本質的な技術なのです。
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