2019年11月18日、日本の金融政策は大きな転換点を迎えています。日本銀行は10月末の決定会合で、追加緩和を急がず現状のマイナス金利を維持する判断を下しました。同志社大学の北坂真一教授はこの決定を「妥当」と評価しつつも、長すぎる超低金利政策がもたらす深刻な副作用について、警鐘を鳴らしています。
現在、輸出の勢いは鈍化しているものの、国内需要は底堅く推移しています。原油安の影響で物価上昇率は控えめですが、デフレに逆戻りするほどの弱さは見られません。しかし、SNS上では「いくら緩和しても給料が上がらない」「銀行の預金金利が低すぎて将来が不安」といった、政策の効果を疑問視する声が根強く残っているのが現状です。
「リバーサルレート」が示す金融緩和の限界点
なぜ、金利を下げても景気が爆発的に良くならないのでしょうか。その鍵を握るのが「リバーサルレート」という概念です。これは、金利を下げすぎると逆に銀行の経営が悪化し、かえって世の中への融資が減ってしまうという「逆転現象」の金利水準を指します。2019年時点の銀行界では、貸出金利と預金金利の差である「利ざや」が極限まで縮小しています。
実際に2016年01月のマイナス金利導入直後こそ住宅ローンが増えましたが、2018年以降、大手銀行のローン残高は減少に転じています。銀行が無理な融資を控え、代わりに海外のハイリスクな金融商品へ投資を振り向ける動きは、将来的な金融危機の火種になりかねません。緩和の「薬」が、すでに「毒」へと変わり始めている可能性を指摘せざるを得ません。
低金利が人々の心を「悲観的」にさせる皮肉
さらに興味深いのは、人々の心理に与える影響です。最新の研究では、中央銀行が「ずっと緩和を続けます」と宣言するほど、国民は「ああ、この先もずっと経済はダメなんだ」と悲観的になる「情報効果」の存在が明らかになっています。低金利が続くことで、かえってデフレ心理が固定化されてしまうという皮肉な結果を招いているのです。
私は、日銀が2%の物価目標を達成する前であっても、早期にマイナス金利を解除すべきだと考えます。金利が正常化に向かう兆しを見せることで、企業の資金需要を前倒しで引き出し、市場に活力を取り戻すことができるからです。ずっと「横ばい」だった長期金利が上昇し、利回り曲線(イールドカーブ)が上向きになることで、金融機関も将来の展望を描けるようになるでしょう。
ただし、金利を上げるためには日本経済の「地力」を高める必要があります。政府には、企業の生産性を向上させる構造改革が求められます。2019年以降の少子高齢化社会を見据えたインフラ整備や新技術への投資こそが、自然利子率(景気に中立的な金利)を押し上げ、私たちがマイナス金利という異常な世界から脱出するための唯一の道なのです。
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