2019年10月28日、日本の電機業界を長年牽引してきたパナソニックの元社長であり、現在は特別顧問を務める中村邦夫氏が、激動の20年間を振り返る貴重なインタビューに応じました。2000年から2012年まで社長・会長として「聖域なき改革」を断行した同氏ですが、その足跡にはテレビ事業への巨額投資という大きな課題も残されています。
現在のパナソニックは、津賀一宏社長のもとでV字回復を成し遂げたものの、本格的な成長軌道を描けずに苦戦しています。中村氏は、自らの経営判断を「時流に乗れなかった」と率直に表現しました。SNS上でも「かつての巨人が時代の変化に飲み込まれた瞬間だった」と、当時の衝撃を思い返す声が多く上がっています。
IT化という「爆弾」とプラズマへの固執
中村氏が語る「時流」とは、まさにIT(情報技術)化という劇的な産業構造の変化を指しています。パソコンの普及でテレビが主役の座を追われ、さらにスマートフォンがパソコンをも凌駕する。この「IT化」という爆弾のような衝撃に、AV(オーディオ・ビジュアル)機器に強みを持っていたパナソニックは、盲目的になっていたと言わざるを得ません。
最大の誤算は、次世代テレビの主役を「プラズマ」と見定めた点にありました。プラズマディスプレイとは、ガス放電を利用して発光する技術で、当時は大型化が容易で色彩が豊かだとされていました。しかし、消費電力や応答速度の面で液晶技術に逆転を許してしまったのです。「映像が見えれば十分」という顧客のニーズを読み違え、安値競争の泥沼に足を踏み入れてしまいました。
三洋電機買収の真意とテスラとの提携
2008年に行われた三洋電機の買収についても、中村氏はその真意を明かしました。狙いは、三洋が持つ優れた「車載電池」の技術です。パナソニックが将来の柱として電池事業を据える中で、当時弱点だった角形電池の技術を補完するために不可欠な判断でした。
現在は米テスラとの提携に数千億円規模の投資を行っていますが、生産の遅れなど課題も山積みです。中村氏は「テスラは競争力のあるパートナー」と評価しつつも、現状の生産体制には厳しい視線を送っています。ネット上では「三洋買収が今のパナソニックの命綱になっている」といった、同氏の先見性を評価する意見も散見されます。
次世代リーダーに贈る「独裁者」のススメ
現在の経営陣に対し、中村氏は「もっと独裁者になりなさい」という驚きの助言を送りました。これは決して強権を振るえという意味ではなく、リーダーが自ら現場を歩き、迅速に意思決定を下すべきだという「経営スピード」への危機感からです。多くの幹部を介した報告や検討に時間を費やすことが、変化の激しい現代では命取りになると説いています。
最後に、自らが主導したプラズマ事業への投資を「失敗だった」と明確に認め、経営者は結果に責任を持ち、ダメなら身を引くべきだという厳しいプロ意識を示しました。創業者の松下幸之助氏が築いた伝統さえも塗り替えてきた改革者の言葉には、時代を生き抜くための冷徹なまでの情熱が宿っています。
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