2019年11月19日、世界経済は大きな転換点を迎えています。かつては金融緩和こそが景気回復の「唯一の選択肢」と信じられてきましたが、その神話が揺らぎ始めています。2018年までは緩和からの「出口」を模索していたはずが、2019年に入り米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が再び緩和へと舵を切りました。この動きに対し、SNSや市場関係者の間では「またお金を刷るのか」「効果はあるのか」といった疑問の声が噴出しています。
現在、世界的に失業率は歴史的な低水準にあり、リーマン・ショック直後のような深刻な需要不足に陥っているわけではありません。それにもかかわらず緩和が続くのは、トランプ米大統領が仕掛けた貿易摩擦という「供給側のショック」による不確実性を、金融政策という万能ではない薬で無理やり抑え込もうとしているからです。しかし、金利を下げすぎれば、将来の景気後退時に打つ手がなくなるだけでなく、バブルを助長するリスクさえ孕んでいるのです。
「日本化」に陥る世界と金融政策の限界
特に注目すべきは、低金利が長引くことで景気刺激効果が失われる「ジャパニフィケーション(日本化)」という現象です。日本銀行の「異次元緩和」は、2%の物価目標を達成できないまま、国債を買い続ける限界に直面しました。さらに、金利が一定水準を下回ると銀行の収益が悪化し、かえって経済に悪影響を及ぼす「リバーサルレート(逆転金利)」という理論も、今や現実味を帯びて議論されるようになっています。
このように金融政策の限界が見える中で、にわかに脚光を浴びているのが財政政策です。かつては財政赤字への懸念からタブー視されてきましたが、主流派の経済学者の間でも「金利がこれほど低いなら、政府が積極的にお金を使うべきだ」という声が強まっています。ドラギ前ECB総裁が退任間際に財政出動の重要性を説いたことは、マクロ経済政策の主役が交代しつつあることを象徴する、非常に印象的なシーンとなりました。
求められるのは「バラマキ」ではない「賢い支出」
日本に目を向ければ、安倍政権はすでに積極的な財政出動を行っていますが、借金がGDPの2倍を超える現状で、無計画な支出を続けることは許されません。ここで重要になるのが「ワイズ・スペンディング(賢い支出)」という考え方です。1990年代、日本は非効率な公共事業に資金を投じましたが、それは結果として「自然利子率(経済を冷やしも温めもしない中立的な金利)」を下げ、潜在成長率を奪うという苦い教訓を残しました。
これからの日本が取るべき道は、財政政策を景気対策の主軸に据えつつ、金融政策は低金利を維持する「補助役」に徹する体制でしょう。ただし、それは単なるバラマキであってはなりません。教育や先端技術など、未来の生産性を高める分野にのみ資源を集中させる必要があります。私は、政治のポピュリズムによる安易な支出を防ぐためにも、政府から独立して財政をチェックする「独立財政機関」の設立が、今こそ不可欠であると考えます。
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