株式市場が乱高下する中、外国為替市場では円相場が「1ドル=110円」を中心に方向感を見失う展開が続いています。10連休の最終日にトランプ米大統領が対中関税引き上げを通告し、世界的に株安が連鎖したにもかかわらず、円相場は109円15銭から110円85銭という極めて狭いレンジ内でのもみ合いに終始しました。SNSでは「円が全然避難通貨になっていない」「動かなさすぎてもはや異常だ」といった声が上がっています。
この値動きの鈍さの背景には、日本のように低インフレが続いて金融緩和が長期化する現象、いわゆる「日本化(ジャパニフィケーション)」の拡大があります。中長期的な相場形成に影響を及ぼす経済の「ファンダメンタルズ」が安定しているのです。たとえば、為替需給のバロメーターである貿易統計も、2019年5月22日に発表された4月速報値では黒字幅が前年同月比で約9割も縮小し、需給面ではほぼ均衡しています。
さらに異質なのが「金利差」の動向です。米連邦準備理事会(FRB)が利上げ方針を撤回したことで、円相場に影響が大きい2年物国債で見た日米間の金利差は、昨年秋の3%をピークに縮小し続けています。本来、日米金利差が縮むことは「円高・ドル安材料」となりますが、中長期の機関投資家は追随しません。その理由は、日米両国が「自国通貨安で経済を下支えしたい」という強いメッセージを声高に打ち出しているからです。
2019年4月25日の日銀・黒田東彦総裁の「かなり長い期間にわたって緩和を継続する」という発言、そして2019年4月30日のトランプ米大統領によるFRBへのさらなる緩和要求は、その証拠でしょう。両国が金融緩和を訴えられるのは、物価高騰のリスクを気にしなくて済む「低インフレ」が続いている影響が大きいのです。いくら米国の金利が下がっても、日本も緩和を続けるため、機関投資家にとっては金利がない円よりもドルの方が魅力的に映るのです。
このように「日本化」が進む現状は、2国間の物価を勘案して適正な為替水準を探る「購買力平価」にも影響を与えています。この購買力平価が円高方向から横ばいに変化しつつあることが指摘されています。2019年5月27日には、トランプ氏が日米貿易交渉の早期合意を困難とする認識を示し、国際情勢は波乱含みですが、この「日本化」の浸透は、中長期的に円相場を現状の水準を中心に安定させる方向に働く可能性が高いでしょう。
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