かつて日本経済が直面した深い闇を「バランスシート不況」と名付け、そのメカニズムを鮮やかに解き明かしたエコノミスト、リチャード・クー氏。彼の最新作が2019年07月13日、再び注目を集めています。かつてのバブル崩壊後、日本企業は抱え込んだ巨額の損失を埋めるため、借金を返す「債務の最小化」に奔走しました。この必死の健全化こそが、実は景気低迷の引き金だったのです。
SNSでは「今の不況の根源がようやく理解できた」「海外の事例と比較すると腑に落ちる」といった納得の声が相次いでいます。そもそもバランスシートとは、企業の資産と負債のバランスを示す「貸借対照表」のこと。通常、低金利なら企業はお金を借りて投資をしますが、負債が多すぎると金利がいくら下がっても借り手がいなくなります。これが、中央銀行の施策が空回りする経済の縮小均衡を生んでしまうわけですね。
世界に広がる日本化と「追われる国」の新たな試練
興味深いことに、リーマン・ショック以降、かつて日本特有だと思われていたこの現象が欧米諸国でも噴出しました。世界中が借り手不足に陥り、貯蓄ばかりが増えて経済が停滞する「日本化」が進んでいると言えるでしょう。しかし、現在の日本はさらに一歩進んだ、別のステージに立たされています。皮肉なことに、企業の借金返済が終わって無借金経営が増えた今でも、なぜか物価も投資意欲も低迷したままなのです。
本書が提示する新理論こそが、タイトルにもある「追われる国」という概念です。日本国内には、もはや企業が積極的に借金をしてまで投資したいと思える魅力的なチャンスが枯渇しているのかもしれません。技術革新の停滞に加え、新興国の急速な追い上げによって、国内よりも海外で事業を行う方が儲かる時代になりました。その結果、資金は外へ流れ、国内の賃金や生産性が向上しないという厳しい現実が突きつけられています。
財政出動か構造改革か?経済の処方箋を巡る議論
著者はこの状況を打破するため、バランスシート不況の時と同様に、政府が積極的にお金を使う「財政支出」の拡大を提唱しています。しかし、ここで専門家の間でも議論が分かれています。確かに、社会の基盤となるインフラ整備に公金を投じることは重要でしょう。一方で、今の日本を圧迫しているのは膨らみ続ける社会保障費であり、単なるバラマキでは持続的な成長は望めないという厳しい意見も根強く存在します。
私個人の見解としては、著者の分析は非常に鋭いと感じるものの、やはり痛みを伴う「構造改革」は避けて通れない道だと考えています。規制緩和や制度設計の見直しによって、日本国内を「投資したくなる場所」へと作り替える努力こそが、真の処方箋になるのではないでしょうか。2019年07月13日現在、本書が投げかけた問題提起は、私たちがどのような未来を選択すべきかを問い直す、極めて重要な指針となるはずです。
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