2019年、Jリーグは創設期を彷彿とさせる熱気に包まれており、その要因はアンドレス・イニエスタ選手、ダビド・ビジャ選手、フェルナンド・トーレス選手といったサッカー界のスーパースターたちが次々と来日し、リーグの華やかさが戻ってきたことにあります。さらに、スマートフォンと連動したサービスなど、観戦の楽しみ方が大きく広がっていることも見逃せません。クラブ数が10から55に増加した現在、Jリーグはかつてないほど身近な存在となっていると言えるでしょう。
この盛り上がりを支えるのが、2016年に締結されたイギリスのスポーツ映像配信サービス「DAZN(ダゾーン)」との巨額な放映権契約です。この契約は、10年間で約2100億円という破格の契約金がリーグ全体に流入し、クラブの資金力を大幅に強化しています。九州産業大学の福田拓哉准教授は、創設当初、欧州の主要クラブと遜色ない資金力で海外の大物選手を呼んでいた時代が、この放映権による資金流入で再び到来しつつあると分析しています。これにより、選手獲得における競争力が回復し、Jリーグのレベルアップにも貢献していくでしょう。
📈 Jリーグ「ビジネスマネジメント力」ランキングTOP4の戦略
Jリーグクラブの経営戦略は年々進化しており、その巧拙を測る指標として、デロイトトーマツグループが17年度の公開情報を基に作成した「Jリーグマネジメントカップ」という資料があります。これは、「平均入場者数」や「新規観戦者割合」など13の指標をポイント化したものです。日経トレンディ編集部は、そのうち特に重要な8つの経営指標に絞って独自の再計算を行い、各クラブのビジネスマネジメント力をランキング化しました。
その結果、ランキングの1位に輝いたのは、Jリーグクラブとして初のアジア王者となり、前年の天皇杯を制した浦和レッズでした。2位には鹿島アントラーズ、3位には横浜F・マリノスが続きました。また、Jリーグを2連覇中という実績を持つ川崎フロンターレが4位に入るという結果になっています。これらの上位クラブが展開する戦略に注目することで、現代のJリーグ経営のトレンドが見えてくることでしょう。
例えば、ランキング1位の浦和レッズは、平均入場者数や客単価(顧客1人あたりの平均支出額)などの指標でトップポイントを獲得し、圧倒的な集客力と収益力を誇っていることが分かります。しかし、その一方で「新規観戦者割合」という指標では圧倒的に低いという弱点も露呈していました。これは、熱狂的なサポーターによる声援が特徴的である反面、サッカー観戦の初心者がスタジアムへ一歩を踏み出しにくい環境となっていたためだと考えられます。レッズは、この課題を解決すべく2019年から「席割改革」を断行し、落ち着いて観戦できる2階席に、自由席と同料金の指定席を新設したのです。これは、より幅広い層のファンを取り込むための戦略的な一手と言えるでしょう。
2位の鹿島アントラーズは、客単価やグッズ関連利益額で上位に食い込み、各指標でバランス良くポイントを獲得しました。彼らの弱点は「スタジアム集客率」です。この数値を高めるため、スタジアムサービスの拡充からアプローチし、2017年には高密度Wi-Fiを導入、翌年の2018年にはスタジアムの大型ビジョンとスマートフォンを連動させたゲームを実施するなど、IT技術を活用した新たな観戦体験の創出に注力しています。
3位の横浜F・マリノスは、平均入場者数や新規観戦者割合で高いポイントをマークし、多くの観客を惹きつける力を持っています。しかし、彼らのスタジアム集客率は下から2番目の低さでした。その原因は、本拠地である日産スタジアムが収容人数7万2081人という巨大すぎることにあります。高い集客力を持ってしても、全ての席を満たすことは難しく、席が余ってしまうという状況です。これに対しマリノスは、2019年から「ダイナミックプライシング」を本格的に導入しました。これは、販売状況に応じてチケット料金が変動する仕組みで、席が余る際は安く、足りない際は高く売るという柔軟な販売が可能になり、収益の最大化を目指す取り組みです。デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーの里崎慎氏が指摘するように、「満員のスタジアムはファン、スポンサー、自治体、選手のすべてを満足させる」ことから、スタジアム集客率という指標はクラブ経営において極めて重要だと考えられます。
🌎アジア展開と有力企業の参入:Jリーグの新たな成長エンジン
クラブのビジネス戦略とチーム成績が連動することで、新たな強豪候補が生まれています。その筆頭が北海道コンサドーレ札幌です。彼らが推し進めるのはアジア展開です。2017年にタイで絶大な人気を誇る選手、チャナティップ選手を獲得すると、アジアで事業を展開する企業から熱い視線を集め、スポンサー収入が激増しました。その結果、2018年度の売上高は約30億円に達し、これは3年前の2倍超という驚異的な成長です。この経営基盤の強化が、クラブ史上最高の4位という前年の好成績に必然的に結びついたと言えるでしょう。
また、ライザップやサイバーエージェントなど、有力企業のJリーグ参入も相次いでおり、リーグ全体の活性化に貢献しています。特にV・ファーレン長崎は、2017年にジャパネットホールディングスがグループ会社化したことで、経営危機から脱却しました。これは、単なる資金援助に留まらず、企業の持つノウハウやブランド力がクラブ経営のテコ入れに成功した好事例でしょう。
Jリーグは、発足当初から「地域密着」を掲げており、それが今もその根幹にあります。選手が地元の学校や病院を訪問するなど、身近なところを探せば、クラブが地域社会と深く関わっていることが容易に分かるはずです。サッカーファンでなくても、地元のJリーグクラブがどのようなビジネス戦略を展開し、地域に根差した活動をしているかに注目すれば、きっとJリーグをより深く楽しめるようになることでしょう。現代Jリーグは、単なるスポーツ興行ではなく、高度なビジネスマネジメントが勝敗を左右する、熱い経営の戦場へと進化しているのです。
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