ANAが仕掛ける「ロボット版ウーバー」とは?日本橋から始まるアバター体験の新時代

距離の壁を超え、誰もがどこへでも一瞬で移動できる。そんなSFのような未来が、ついに現実のものとして動き出しました。日本の空を支えるANAホールディングスが、航空事業の枠を超えて挑むのは「アバター」と呼ばれる遠隔操作ロボットの社会実装です。これは単なるロボットの導入ではなく、移動の概念を根底から変える壮大な挑戦といえるでしょう。

2019年12月5日から2019年12月24日までの期間、東京の日本橋に不思議な店舗「avatar-in store」が登場しました。一見すると洗練されたギフトショップですが、驚くべきことに客用の出入り口が存在しません。店内にいるのはスタッフと、独自のフォルムを持つロボット「newme(ニューミー)」だけ。客は自宅にいながらネット経由でこのロボットを操り、買い物を楽しむのです。

SNS上では、この新しい体験に対して「動くテレビ電話のようで面白い」「入院中でも買い物に行けるのは画期的」といったポジティブな反応が相次いでいます。アバターとは、自分の意識や動作をネットワーク経由でロボットに投影し、遠隔地で活動する分身のような存在を指します。画面越しに相手の顔が見えるため、ビデオ通話よりも格段に「そこにいる」感覚を共有できるのが特徴です。

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百貨店のおもてなしを遠隔で!「newme」が変えるショッピング

このニューミーの操作は驚くほど簡単です。パソコンのキーボードを使って移動し、自由に首を振って周囲を見渡すことができます。内蔵されたカメラが利用者の「目」になり、マイクが「耳」や「口」となって、店員さんと会話を弾ませながら商品を選べます。単なる通販サイトのポチる操作とは異なり、店員さんの表情や身振り手振りを感じる、温かみのある対話が可能になりました。

三越伊勢丹の牧野伸喜執行役員は、この技術によって「百貨店ならではのおもてなし」が伝わると語ります。実店舗の陳列や接客技術がそのまま生かせるため、通販では味わえない「偶然の出会い」や「手厚いサポート」が提供できるのです。これは店舗側にとっても、物理的な距離をゼロにして世界中から集客できる強力な武器になるに違いありません。

ANAホールディングスは、この日本橋での試みを序章とし、2020年度内には同エリアへ100体ものニューミーを投入する計画を立てています。2020年1月からはアート展の鑑賞に、3月からは宇宙ビジネス拠点や地域教育の場へと、活用の幅を急速に広げていく予定です。街のあちこちにロボットが待機し、誰でもすぐに乗り込める「シェアリングロボット」のインフラ化が始まろうとしています。

空の知見を地上へ、誰もが使える「移動」のインフラへ

「なぜ航空会社がロボットを?」という疑問に対し、アバター準備室の深堀昂ディレクターは、航空輸送の管理ノウハウこそが普及の鍵だと確信しています。数万台のロボットを安全に制御する技術は、空の安全を守ってきた彼らの得意分野だからです。特定の個人の持ち物ではなく、必要な時に誰でもアクセスできる「ライドシェア」のような仕組みを目指す姿は、まさにロボット界のウーバーといえるでしょう。

驚くべきことに、ニューミーは基本ソフト(OS)レベルから自社開発されています。既存の製品では満足できず、子供が思わず抱きつきたくなるような親しみやすいデザインまで徹底してこだわりました。OSとは、ロボットを動かすための最も基礎となるプログラムのことですが、これを自前で作る姿勢からは、単なる実験に留まらないANAの本気度が強く伝わってきます。

個人的には、この技術が「移動の民主化」をもたらすと感じています。身体的な制約や時間的な都合で旅を諦めていた人々にとって、アバターは新たな翼になるはずです。かつて飛行機が遠くの街を身近にしたように、アバターロボットが日常に溶け込む2020年は、本当の意味での「サイボーグ元年」として記憶されることになるでしょう。

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