北関東に甚大な爪痕を残した激甚災害、台風19号の上陸から2020年1月12日でちょうど3ヶ月を迎えます。被災地では懸命な清掃活動や設備の修繕が続けられ、企業は一歩ずつ生産再開へと歩みを進めている状況です。ネット上では「大好きな地元の店に早く復活してほしい」「がんばれ北関東!」といった温かいエールが数多く寄せられています。しかし、現場の事業者たちが今、事業を継続するか否かの大きな岐路に立たされているのをご存じでしょうか。
野菜の冷凍加工を営む水戸冷凍食品(茨城県水戸市)では、すべての設備が水没するという絶望的な被害を受けました。新品の調達には膨大な時間がかかるため、扇風機で機械を乾かすという執念の応急処置を施し、被災からわずか1ヶ月で生産を再開させたのです。現在は生産能力が被災前の7割程度まで回復しており、その驚異的な粘り強さにSNSでも感動と称賛の声が広がっています。
また、吾妻川の増水によって鳴岩橋が流失した群馬県嬬恋村では、2019年末に緊急の迂回路が開通しました。いまだ営業再開のめどが立たない旅館もあるものの、観光支援策である「ふっこう割(旅行代金の割引補助制度)」が追い風となり、客足の回復へ大きな期待が寄せられているところです。
二重ローンの恐怖と立ちはだかる手続きの壁
復旧が進む一方で、中小企業を最も苦しめているのが再建資金の確保です。宇都宮市で70年以上続く松崎屋製麺所は、田川の氾濫で機械や配送車が浸水し、年商の半分にあたる1000万円もの大損害を被りました。機械の買い替えが不可欠ですが、すでに被災後の借入金があり、さらなる債務を抱える二重の負担は経営を圧迫します。
こうした企業を救うため、国は最大15億円を補助する手厚い「グループ補助金」などを用意しました。これは被災した中小企業が複数でグループを組み、復興計画を国に認めてもらうことで、建物や設備の復旧費用の4分の3を支援してもらえる心強い制度です。
ところが、この素晴らしい制度の前に「申請の壁」が立ちはだかります。手続きには、どの設備が壊れたかを証明する資産管理台帳や、緻密な経営計画書など膨大な書類が求められるのです。少人数の町工場や家族経営の商店にとって、日々の復旧作業をこなしながら、これほど複雑な書類を揃えるのは至難の業だと言わざるを得ません。
実際に、2019年11月に開設された茨城県の相談窓口には、連日「書き方がわからない」という悲痛な電話が1日平均で約20件も殺到しています。これに対しSNSでは、「お国のお役所仕事はいつもハードルが高すぎる」「助ける気があるならもっと簡素化して!」といった、制度の煩雑さに対する不満や疑問の声が噴出しているのが現状です。
地域を守る!自治体が見せた独自のスピード支援
国の手続きが難航する中、地場の経済を守るために独自の知恵を絞る自治体も現れ始めました。栃木県栃木市は、独自の利子補給制度や最大100万円の復旧費用補助を新設し、2020年1月15日から交付をスタートします。2020年1月10日時点で、すでに50件を超える申し込みがあり、そのスピード感に期待が高まります。
さらに、600以上の事業者が被災した栃木県佐野市では、商工団体が会員以外の書類作成をサポートした場合、団体側に最大5万円を補助するユニークな仕組みを導入しました。専門知識を持つ団体をバックアップすることで、すべての事業者をこぼさず救い上げようという素晴らしい試みです。
私は、こうした自治体独自の柔軟なアプローチこそが、今まさに求められている支援の理想像だと確信しています。災害時において、スピードと分かりやすさは何よりも優先されるべき正義です。国は不正を防ぐための厳格さを保ちつつも、有事の際には手続きを大胆に簡略化する「特例措置」を平時から備えておくべきではないでしょうか。美しい北関東の産業の火を消さないために、官民が一体となったさらなるサポートを期待してやみません。
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