2019年10月の記録的な豪雨をもたらした台風19号の爪痕は、発生から1カ月が経過した2019年11月13日現在もなお、東北地方の各地に深い影を落としています。特に福島県郡山市や宮城県丸森町では、生活の基盤を揺るがす甚大な被害が続いています。街を歩けば、かつては大切に使われていた家具や家電が「災害ごみ」として道端に山積しており、被災された方々の悲痛な思いが伝わってきます。
SNS上では、連日のように積み上がる廃棄物の山を目の当たりにした人々から「片付けても片付けても終わりが見えない」「異臭がし始めて不安だ」といった悲鳴に近い声が相次いでいます。ボランティアの尽力も続いていますが、個人の力だけではどうにもならない圧倒的な物量を前に、行政による抜本的な処理体制の構築が急務となっています。しかし、肝心の処理施設自体がダメージを受けているという皮肉な現実が立ちはだかっています。
処理能力が半減した郡山市と、年間6倍のごみに直面する丸森町
福島県郡山市では、阿武隈川の氾濫によって主要なごみ焼却施設である「富久山クリーンセンター」が浸水被害に見舞われました。2018年に26億円もの巨費を投じてリニューアルしたばかりの設備が水没し、電気系統が故障したことで、市内のごみ処理能力は半分にまで落ち込んでいます。仮復旧は最短でも2019年12月下旬とされており、住民からは「家を直したくても、壊れた家具を出す場所がない」という困惑の声が漏れています。
一方、宮城県丸森町では、わずか1カ月で年間排出量の約6.5倍に相当する1万9000トンの災害ごみが発生すると予測されています。ここで注目すべきは「災害ごみ」という言葉の重みです。これは地震や水害によって壊れた家財道具や建具、土砂などを指しますが、これらは適切に分別・処理されなければ衛生環境を悪化させる二次災害の火種となります。丸森町では道路の寸断も重なり、回収作業は困難を極めている状況です。
生活再建の「鍵」となる罹災証明書の発行を阻む人手不足
被災者が一日も早く元の生活を取り戻すために不可欠なのが「罹災(りさい)証明書」です。これは自治体が家屋の被害状況を調査し、「全壊」や「半壊」といった区分を認定する書類です。この証明書がなければ、義援金の受給や仮設住宅への入居、税金の減免といった公的支援が受けられません。いわば被災者の権利を守るパスポートのような存在ですが、その発行が大幅に遅れている事態は看過できません。
2019年11月7日の集計では、福島県内の申請約2万7000件に対し、発行済みはわずか13%程度でした。郡山市にいたっては発行率約2%という厳しい数字が出ています。遅延の背景には、災害ごみへの対応や避難所の運営に加え、11月10日の県議選事務などが重なり、調査員となる職員が絶対的に不足している現状があります。現場の職員が「歯を食いしばるしかない」と語る言葉からは、地方自治体のリソースの限界が透けて見えます。
編集部の視点としては、インフラの強靭化はもちろん、こうした大規模災害時における広域的な事務支援体制の構築を急ぐべきだと感じます。ごみの山が残り、証明書も届かない状況では、被災者の心は折れてしまいかねません。ハード面での復旧と並行して、一人ひとりの「日常」を取り戻すためのスピード感ある行政サポートが、今この瞬間も切実に求められています。
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