台風19号から1カ月。被災企業の命運を分けた「想定外」への備えとBCPの真価

2019年10月の日本列島を襲った台風19号の爪痕は、発生から1カ月が経過した2019年11月13日現在も、北関東の産業界に重い課題を突き付けています。栃木県鹿沼市の金属部品加工メーカー、横尾製作所では、これまで安全だと信じていた本社工場が、増水した河川の濁流によって「孤立した島」のような状態に陥りました。

驚くべきことに、同社の拠点は自治体のハザードマップ(自然災害の被害を予測した地図)において、浸水想定区域には入っていませんでした。「周囲の田んぼより高いから大丈夫だ」という確信が、自然の猛威によって覆されたのです。SNS上でも「マップ外だからと安心はできない」「想定外という言葉の恐ろしさを痛感する」といった、企業の危機管理に対する不安の声が数多く寄せられています。

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工業団地に潜む水害リスクの現実

日本経済新聞の調査によれば、北関東3県の広大な工業団地のうち、実に80カ所が浸水想定区域内に位置していることが判明しました。河川に近い平坦な土地は、大規模な工場を建てるには適していますが、ひとたび氾濫が起きれば甚大な経済的損失を招きます。実際に、今回の台風ではスバル(SUBARU)の取引先が被災し、完成車工場が一時停止に追い込まれるなど、サプライチェーン全体への影響が顕著となりました。

ここで注目されているのが「BCP(事業継続計画)」の有無です。BCPとは、災害などの緊急事態において、損害を最小限に抑えつつ事業を早期に復旧させるための行動計画を指します。以前の豪雨で数カ月の操業停止を経験した栃木県佐野市の藤坂では、2018年に策定したBCPに基づき、台風上陸前から採石場を「貯水池」として活用する対策を講じました。その結果、操業停止をわずか3週間に短縮することに成功したのです。

未来を守るための「攻め」の防災対策

茨城県常陸大宮市の納豆メーカー、丸真食品も、BCPを単なる書類に留めず実践した好例といえるでしょう。2016年に建設された新工場は、洪水を見越して地盤を1.5メートル以上も底上げし、変電設備を高い場所に設置していました。この「物理的な備え」があったからこそ、広範囲で断水が続く中でも迅速な復旧が可能となったのです。

私は、これからの企業経営において、防災を「コスト」ではなく「投資」と捉える視点が不可欠だと考えます。自治体や金融機関もこの動きを加速させており、栃木県や群馬県ではBCP策定の支援を強化しています。また、常陽銀行のように大規模地震の際に返済を一部免除する特別な融資制度を設けるなど、官民一体となったバックアップ体制が整備されつつあります。

2011年の東日本大震災以降、私たちは「想定外」という言葉を何度も耳にしてきました。しかし、もはや災害は避けて通れない前提として考えるべきです。立地条件に甘んじることなく、いかにして社員の雇用と供給責任を守り抜くか。台風19号が残した教訓は、すべての経営者にとって、自社の在り方を根本から見直す重要な転換点になるはずです。

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