2019年10月の台風19号は、福島県郡山市に甚大な爪痕を残しました。特に阿武隈川とその支流が氾濫したことで、地域の産業を支える「郡山中央工業団地」などは最大2メートル前後という激しい浸水被害に見舞われています。これを受け、郡山市は2019年11月12日、被災した企業が安全な高台へと拠点を移すための画期的な支援策を打ち出しました。
今回の目玉は、既存の「工場立地助成制度」を大幅にパワーアップさせた点にあります。具体的には、新しい土地を取得する際にかかる費用の30%を市が補助するというものです。これまでは25%(上限1億円)だった補助率を5ポイント引き上げることで、再建を目指す経営者の皆様を強力にバックアップする姿勢を示しています。
さらに、資金面だけでなく維持コストへの配慮も忘れてはいません。固定資産税や都市計画税といった税金の減免期間が、これまでの3年間から5年間へと延長されることが決まりました。上限額は年間2,000万円となっており、長期間にわたって経営の安定化をサポートする仕組みが整えられたといえるでしょう。
この制度の対象となるのは、水害によって建物が「半壊」から「全壊」の判定を受け、罹災証明書(りさいしょうめいしょ)を交付された企業です。罹災証明書とは、自治体が被害の程度を公的に証明する書類で、これがあることで公的な支援や保険金の請求が可能になります。今回のように甚大な被害を受けた企業にとっては、まさに復興への「通行証」となる重要な書類です。
高台への移転で「二度と繰り返さない」安全な経営基盤を
移転先として想定されているのは、東北自動車道の西側に位置する「郡山西部第一工業団地」および「同第二工業団地」です。これらのエリアは標高が高い場所に位置しており、2019年10月の台風の際もほとんど被害が出ませんでした。市が販売するこれらの土地へ移転することで、将来的な浸水リスクを最小限に抑えることが可能になります。
実は、中央工業団地などは1986年(昭和61年)にも同様の水害を経験しており、今回で2度目の被災となった企業も少なくありません。ネット上では「何度も被災するのは耐えられない」「企業が郡山から離れてしまうのが一番怖い」といった切実な声が上がっていました。こうした背景から、今回の高台移転支援は、地域の雇用と経済を死守するための「防波堤」としての役割も期待されています。
ただし、本制度を利用するには期間の制限があるため注意が必要です。2022年3月31日までに土地の購入契約を完了させ、2025年3月31日までに操業を開始することが条件とされました。迅速な意思決定が求められるものの、市がこれほど手厚い条件を提示するのは、それだけ企業の流出に対して強い危機感を抱いている証左ではないでしょうか。
私個人としては、今回の郡山市の対応は非常に合理的かつ温かみのある決断だと感じています。災害のたびに巨額の損失を出しながら同じ場所で耐え忍ぶのではなく、安全な場所への移動を公的に促すことは、持続可能な都市経営のモデルケースになるはずです。企業の皆様がこの制度を賢く活用し、一日も早く活気ある「商都・郡山」が復活することを願ってやみません。
コメント