2019年10月の台風19号は、福島県内に甚大な爪痕を残しました。特に阿武隈川の氾濫に見舞われた郡山市周辺では、命を守る最前線である消防組織が、かつてない過酷な状況に置かれていたことが判明しています。郡山地方広域消防組合で通信指令の指揮を執った鈴木哲則主幹は、2019年11月05日までの取材に対し、当時の壮絶な現場の様子を語りました。
被害が急速に拡大した2019年10月13日の未明から朝にかけて、同消防組合には通常の20倍を超える救助要請が殺到したそうです。普段は1時間あたり3件ほどの通報が平均的ですが、この日は午前9時まで1時間あたり約70件ものSOSが鳴り止まなかったといいます。職員を倍増させて対応にあたったものの、押し寄せる濁流が救助隊の行く手を阻み、現場への到着には多大な時間を要しました。
未曾有の災害が突きつけた現実と、命を繋ぐための教訓
鈴木氏は、激しい揺れに見舞われた東日本大震災の際も現場を経験していますが、今回の台風による通報の継続時間はそれを遥かに凌駕するものでした。震災時は通報の集中が3時間ほどで収まったのに対し、今回は長時間にわたって救助を求める声が延々と続き、人手不足から即座に向かえないもどかしさに胸を締め付けられたと振り返っています。助けを待つ方々に「待ってほしい」と告げる苦渋の決断は、察するに余りあります。
SNS上では、浸水被害を受けた蔵元の状況を心配する声や、不眠不休で救助にあたる消防士への感謝、そして「自分たちの地域がこれほどまでになるとは」という驚きの投稿が相次いでいます。福島が誇る「日本酒」の仕込み時期と重なったこともあり、伝統の味を守ろうと奮闘する関係者へのエールも広がっています。現在は官民が一体となり、この難局を乗り越えようとする強い意志が感じられるでしょう。
今回の事態を受けて鈴木氏は、災害が発生してから動くのではなく、台風が到来する前から住民一人ひとりの防災意識を高める重要性を痛感していると述べています。私は、こうした現場の悲痛な叫びを無駄にしてはならないと考えます。行政の救助には物理的な限界があるからこそ、私たち市民が事前にハザードマップを確認し、早めの避難を心がける「自助」の精神こそが、次の悲劇を防ぐ鍵になるはずです。
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