流域自治体の団結が命を救う!2019年台風19号の教訓と「命山計画」が描く水害に強い未来

2019年10月の台風19号は、私たちの社会に大きな爪痕を残しました。しかし、この未曾有の災害は、日本の治水システムが一定の成果を収めていることも証明しました。1947年9月のカスリーン台風をきっかけに整備が進められた上流のダムや下流の放水路といったインフラが、首都圏の決壊を辛うじて防いだのです。SNS上では、試験貯水中だった八ツ場ダムの「神回避」とも呼べる貯水能力に驚きの声が上がりました。

ハード面の強さが光った一方で、ソフト面である「避難のあり方」には深刻な課題が浮き彫りになりました。雨風が激しくなった夜間に避難勧告を出すのは、むしろ危険を伴うため避けるべきでしょう。川の水位を確認してから判断する従来の手法では、対応が後手に回ってしまいます。たとえ結果的に被害がなかったとしても、空振り覚悟で明るいうちから避難を呼びかける決断力が、これからの自治体には強く求められているのです。

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流域行政の実現へ!オランダに学ぶ専門組織の必要性

避難判断の遅れの背景には、約3割の市町村で土木技術の専門職が不足しているという厳しい現実があります。ダムの緊急放流といった高度な判断に対し、下流の自治体がその意図を正しく理解し、速やかに避難へ繋げる体制が整っていません。そこで、河川の流域に住む自治体が一体となって対策を講じる「流域行政」という考え方が重要になります。自治体同士が資機材や人員を共有し、運命共同体として歩むべき時が来ています。

このモデルとして注目すべきは、海抜ゼロメートル地帯が広がるオランダの「ウォーターボード」です。これは治水を専門とする地域組織で、政治の動向に左右されることなく、独自の税収で安定した防災事業を継続しています。海抜ゼロメートル地帯とは、満潮時の海水面よりも土地が低い場所を指し、日本でも約440万人がこうした危険なエリアに暮らしています。私たちも特定の政治判断に依存しない、恒久的な治水基金の設立を検討すべきではないでしょうか。

都市を守る究極の防災「命山計画」とは

人口の密集する東京では、大規模な移転による防災は現実的ではありません。そこで提案されているのが、土屋信行氏の提唱する「命山(いのちやま)計画」です。これは盛り土などによって、住民全員が一時的に避難できる高台を計画的に作り出す構想です。江戸川区の葛西地区では、すでに「スーパー堤防」を活用した盛り土による街づくりが行われており、伊勢湾台風クラスの災害でも耐えうる強固な基盤が整備されています。

スーパー堤防とは、通常の堤防よりも幅を広く取り、決壊しにくくした土手のことです。この事業には民間投資も積極的に活用されており、公費を抑えながら災害に強い街を実現しています。命山計画の実施には約8兆円という膨大な予算が見込まれますが、東京湾で巨大高潮が発生した場合の被害額は115兆円に達すると推計されています。事前に投資を行う方が、被災後の復旧よりも圧倒的に効率が良いことは、経済的な視点からも明らかでしょう。

気象の凶暴化は加速しており、「想定外」という言葉で片付けることはもはや許されません。インフラの完成を待つだけでなく、私たち一人ひとりが最悪の事態を具体的にイメージし、行動することが大切です。命を守るための投資と、個人の防災意識の両輪を回していくことこそが、水害の猛威に打ち勝つ唯一の道であると確信しています。

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