2019年10月12日に日本列島を襲った記録的な台風19号は、関東地方の河川に未曾有の増水をもたらしました。この絶体絶命の危機を救ったのが、埼玉県春日部市に位置する「首都圏外郭放水路」です。SNS上では、まるでファンタジー映画の舞台のようなその姿から「地下神殿」と呼ばれ、日本の土木技術の結晶として大きな注目を浴びています。
この施設は、中小河川が氾濫しそうになった際、その水を地下に取り込み、巨大な江戸川へと受け流す役割を担っています。今回の記録的な大雨において、この巨大施設がその真価を存分に発揮したことは間違いありません。ネット上では、この放水路の活躍によって救われた命や財産に対し、驚きと感謝の声が次々と投稿されており、まさに「守護神」としての地位を確立したといえるでしょう。
薄氷の勝利?都心の治水整備が抱える深刻な実態
しかし、今回の台風で浸水を免れたからといって、決して楽観視できる状況ではありません。東京都が2019年10月29日時点で公表しているデータによれば、都内の調節池の整備率は、目標に対してわずか3割程度にとどまっているのです。調節池とは、一時的に雨水を溜めて下水道や河川への負荷を軽減するための「貯水槽」のような施設を指しますが、都心部では土地の確保が極めて困難であるという壁が立ちはだかっています。
用地を取得するためのコストは天文学的な数字に膨れ上がり、工事の完了までには数十年という膨大な歳月を要することが珍しくありません。私個人の意見としては、現在の気候変動による豪雨の激甚化に、インフラの整備スピードが追いついていない現状に強い危機感を覚えます。ハード面での対策には限界があることを、私たちは今一度冷静に受け止めなければならないはずです。
行政が大規模な公共事業を進める一方で、住民一人ひとりが「自分の住む場所のリスク」を再認識することも大切でしょう。最新のハザードマップを確認し、万が一の避難計画を立てておくことが、不完全な治水対策を補う唯一の手段かもしれません。いつ起こるかわからない次の災害に備え、官民が一体となった防災意識のアップデートが求められています。
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