細胞生物学者・永田和宏氏が語る「科学と短歌」の融合!宮中歌会始の選者が紡ぐ、ロジックと感情が調和した世界

お正月の風物詩として知られる宮中歌会始が、2020年1月16日にいよいよ開催されます。年号が令和になってから初めて迎える今回の歌会始で、ひと際注目を集めているのが、2004年から詠進歌の選者を務めている永田和宏さんです。細胞生物学者としての顔も持つ永田さんは、今や選者の中でも最も経験豊富な最古参の存在となりました。

通常であれば1年前に決まっている歌会始のお題ですが、2019年は天皇の代替わりという歴史的な節目が重なったため、発表が5月に持ち越される異例の事態となりました。それでも全国から1万5324首もの熱意あふれる短歌が寄せられ、永田さんをはじめとする5人の選者が、3回もの厳正な吟味を重ねてわずか10首にまで絞り込んだのです。

選考の舞台裏についてSNSでは、「膨大な数の短歌からたった10首を選ぶなんて、想像を絶する集中力が必要そう」といった驚きの声が多く上がっています。しかし、日頃から新聞の歌壇でも選者を務める永田さんは、優れた歌には一目で心に飛び込んでくる輝きがあると語り、大きな負担とは感じていないそうです。

2019年の秋には、これまでの多大な功績が認められて瑞宝中綬章を受章した永田さん。2017年にはタンパク質研究の国際組織から、日本人として初めて「ハンス・ノイラート科学賞」を授与されるなど、学術界でも世界的な評価を受けています。理系の最先端を走る細胞生物学と、文系の極みである短歌という二つの道を、見事に両立させている姿には驚かされるばかりです。

スポンサーリンク

理系と文系の奇跡的な融合がもたらす豊かな視点

29歳という若さで、妻子がありながら会社員を辞めて大学院へと戻った永田さんは、激しい日々の研究に追われながらも短歌の創作を続けてきました。科学の最前線であるサイエンス領域は日進月歩であり、トレンドを見失わないために海外の英語論文をチェックしつつ、熱心に実験に没頭する毎日を過ごしています。一見すると相反する二つの分野ですが、自身の心の中では論理的なロジックと豊かな感情が、美しく均衡を保っているのでしょう。

そんな永田さんの歩みを支えたのは、2010年8月にがんのため先立たれた、最愛の妻であり同じく著名な歌人でもあった河野裕子さんの存在です。2009年と2010年には夫婦揃って宮中歌会始の選者を務めるという、歴史的にも大変珍しい、異例にして微笑ましい大役を果たされました。深い喪失感を抱えながらも、没後10年を迎える2020年は、二人の出会いからの軌跡を振り返る回想録の連載が雑誌でスタートします。

永田さんの魅力は、映画監督の是枝裕和さんや将棋棋士の羽生善治さん、さらには漫画家の池田理代子さんなど、ジャンルを超えた幅広い交友関係にも表れています。短歌という伝統文化が結んだ不思議なご縁は、科学の世界だけでは得られない多彩な感性を、永田さんに与えているのかもしれません。

2020年4月からは、日本たばこ産業が運営する「JT生命誌研究館」の館長に就任することが決まっています。生命誌とは、地球上の多様な生き物が38億年という時間をかけて進化してきた歴史を読み解き、人間がどう生きるべきかを考える学問のことです。科学を「他人事」から「我がこと」へと変え、一般の人々との距離を縮めたいと語る永田さんの新たな挑戦から、今後も目が離せません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました