神奈川県愛川町に拠点を構え、精密な研削盤製造で世界から注目を集める牧野フライス精機が、いよいよ次なるステージへと舵を切ります。2019年12月6日、同社は製造工程の一部自動化に踏み切ることを発表しました。これまで熟練工の「匠の技」に頼ってきた組み立てや検査の工程に最新のロボットを導入し、テクノロジーの力で生産能力を劇的に引き上げる計画です。
今回の改革の背景には、中国市場を中心とした爆発的な需要の拡大があります。2019年4月に建て替えられたばかりの最先端の新工場をフル活用し、2021年度までには月間の生産能力を旧工場比で1.5倍となる16.5台まで引き上げる見込みです。SNS上では「あの精密機械の組み立てを自動化できるのか」「日本のものづくりが新しい形に進化している」といった驚きと期待の声が数多く寄せられています。
自動化がもたらす24時間稼働の衝撃
主力の工具研削盤は、金属を1ミクロンという極限の単位で削り出す「精密部品の集合体」です。ちなみに1ミクロンとは1000分の1ミリメートルのことで、髪の毛の太さの数十分の一という驚異的な精度を指します。これまではオーダーメイド生産が中心だったため自動化が困難とされてきましたが、同社は加工部品を載せる「パレット」の組み立てにロボットを導入するという英断を下しました。
面白いことに、ロボットによる組み立て時間は1個あたり7分と、熟練職人の5分に比べれば現時点では劣ります。しかし、ロボットの真価は24時間休まず稼働できる継続性にあります。あらかじめストックを確保しておくことで、急な発注にも即座に対応できる体制が整うのです。実証実験は着実に進んでおり、早ければ2019年内にも本格的な運用が開始される予定で、現場の風景は一変することでしょう。
検査の自動化で働き方改革と品質維持を両立
さらに注目すべきは、完成品検査の自動化です。特に重要なのが「コレット」と呼ばれる、削る金属を固定するための部品の検査です。このコレットの固定力が不安定だと、加工中に金属がズレてしまい、せっかくの超精密設定が台無しになってしまいます。これまでは測定器を用いて1本あたり1時間を要していた過酷な作業ですが、今後は退社時にセットするだけで翌朝には検査が完了する仕組みへと移行します。
編集者の視点から見れば、今回の投資は単なる効率化に留まらず、職人の負担を減らしつつ高い品質を担保する「攻め」と「守り」が一体となった素晴らしい戦略だと感じます。伝統的な手仕事の良さを理解しているからこそ、どこを機械に任せ、どこに人間の感性を残すべきかを熟知しているのでしょう。デジタルとアナログが融合した牧野フライス精機の挑戦は、日本の中小製造業が生き残るための輝かしい道標となるはずです。
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