1959年12月に始まった在日コリアンの「帰国事業」が、間もなく大きな節目である60周年を迎えようとしています。かつて「地上の楽園」という希望を胸に北朝鮮へ渡った人々は、現地でどのような運命を辿ったのでしょうか。その隠された足跡を辿る貴重なシンポジウムが、2019年11月13日に大阪市北区の大阪市立住まい情報センターで開催されます。
この催しを企画したのは、大阪市を拠点に活動する一般社団法人「北朝鮮帰国者の記憶を記録する会」です。1959年から1984年まで続いた帰国事業では、在日コリアンやその日本人配偶者ら約9万3000人が海を渡りました。しかし、彼らが北朝鮮で送った波乱に満ちた人生の詳細は、歴史の闇に埋もれたまま公的な記録がほとんど残されていないのが現状です。
SNS上では「教科書では学べない生々しい歴史を知る機会だ」といった声や、「今なお日本で暮らす脱北帰国者がいることを初めて知った」という驚きの反応が広がっています。現在、北朝鮮から逃れて日本に再入国した人は約200人、韓国には約300人が居住しているとされています。彼らの証言は、私たちが共有すべき負の遺産を直視するための重要な鍵となるでしょう。
関西から海を渡った当事者が語る「空白の半世紀」
2019年11月13日の講演には、1970年代に関西地方から北朝鮮へ渡り、後に脱北を果たした金柱聖(キム・ジュソン)さんらが登壇する予定です。現在は韓国で暮らす金さんの言葉からは、国家のプロパガンダと現実のギャップが鮮明に浮かび上がるはずです。個人の尊厳がどのように扱われたのか、実体験に基づいた告白は聴衆の心に深く突き刺さるに違いありません。
ここで「帰国事業」について改めて解説しましょう。これは、日本と北朝鮮の赤十字社が合意し、北朝鮮を「理想郷」として宣伝することで大規模な移住を促した人道事業を指します。しかし、実際には多くの人々が過酷な労働や監視下に置かれ、日本への自由な往来も許されないという悲劇を生みました。この歴史的背景を知ることで、登壇者の言葉の重みがより一層理解できるはずです。
私は、こうした「個人の記憶」を記録に残す活動こそ、政治的な対立を超えて守られるべきだと考えます。国家の大きな歯車に翻弄された一人ひとりの人生に光を当てることは、同じ過ちを繰り返さないための防波堤になるからです。公式記録がないからこそ、生存している当事者の肉声を聞くことができる今という時間は、極めて限定的で価値のあるものだと言えるでしょう。
大阪での開催は午後6時30分から開始され、入場料は1000円、学生は無料となっています。さらに、2019年11月17日には東京都新宿区の早稲田大学でも同様のシンポジウムが予定されています。歴史の証人たちの声に耳を傾け、私たちの隣人が歩んできた壮絶なドラマを知るために、ぜひ会場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
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