北陸新幹線の開業以来、国内外から多くの観光客が押し寄せ、活況に沸く金沢市。しかし、その華やかなニュースの裏で、宿泊施設同士の熾烈な「生存競争」が勃発していることをご存じでしょうか。
2019年5月28日現在、金沢のゲストハウス業界が大きな転換点を迎えています。きっかけは、今年4月に導入されたばかりの「宿泊税」と、ホテルの供給過多による価格競争です。逆風が吹き荒れる中、独自のアイデアと深いおもてなしで勝負を挑む、個性派ゲストハウスたちの奮闘に迫ります。
「英語で握る寿司」が切り開く、インバウンドの新しい食卓
「台湾ではウナギを食べますか?炭火で焼くとパリパリして美味しいですよ」。そんな流暢な会話が聞こえてくるのは、ゲストハウス運営会社「グッドネイバーズ」が4月にオープンしたばかりの「おすしと和食 はた中」です。
町家を改装した風情ある店舗で腕を振るうのは、なんとマレーシアの高級店で首相らをもてなした経験を持つ、女性料理長の畠中亜弥子さん。彼女を筆頭に、英語でネタや日本文化を解説しながら食事を提供するスタイルが、外国人観光客の心を鷲掴みにしています。
実は今、金沢では「夕食難民」の問題が深刻化しています。増え続けるホテルの多くは「宿泊特化型」でレストランを持たず、街中の飲食店も「一見さんや外国人は対応しきれない」と断るケースが少なくありません。
私はコラムニストとして、この「食のバリアフリー化」は極めて重要な戦略だと感じます。単に泊まる場所を提供するだけでなく、「安心して美味しいものが食べられる」という体験までセットにすることで、旅行者の満足度は劇的に向上するからです。
たかが200円、されど200円。宿泊税ショックを乗り越えろ
ゲストハウスがこれほどまでに「体験」を重視する背景には、切実な懐事情があります。金沢市では2015年比で簡易宿所の客室数が3倍以上に急増した一方、ビジネスホテルの建設ラッシュも続き、1泊5000円前後で泊まれるホテルが増えてきました。
そこに追い打ちをかけたのが、4月から始まった「宿泊税」です。1泊2万円未満で200円という税額は、東京都や大阪府などに続く導入事例ですが、バックパッカーのような節約旅行者にとっては決して小さくない負担です。
SNS上でも、「たった200円でも連泊すると痛い」「安宿の良さが消えるなら、少し高くてもホテルに泊まる」といったシビアな声が散見されます。価格差が縮まる中、安さだけを売りにしていては、ゲストハウスは生き残れない時代に突入したのです。
「一期一会」を演出する、アナログな温かさ
そこで鍵となるのが、ホテルには真似できない「人との交流」です。ゲストハウス「ポンギー」では、その日の宿泊客の国籍や滞在日数に合わせて、折り鶴体験や書き初めなどのイベントを柔軟に開催しています。
また、「KANAZAWA 旅音」を運営する「こみんぐる」は、地元に移住してきた住民と観光客を混ぜ合わせた交流会「金沢よそもん会」を企画。ただ観光地を巡るだけでは得られない、ディープな金沢の日常を味わえる場を提供しています。
便利で綺麗なホテルも良いですが、旅の醍醐味はやはり「人」にあると私は思います。逆境をバネに進化する金沢のゲストハウス。そのおもてなしの心は、税金の壁など軽々と超えて、世界中の旅人を魅了し続けることでしょう。
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