北海道内でいま、観光振興のための新たな財源確保を目指し、「宿泊税」や「観光税」といった新しい税金の導入を検討する動きが、道と各市町村の間で活発化しています。札幌市や国際的なリゾート地である倶知安町(くっちゃんちょう)などが具体的な検討に乗り出しており、鈴木直道知事も観光税の導入が不可欠であるとの認識を示されている状況です。これは、急増する外国人観光客(インバウンド)に対応するためのインフラ整備やサービス拡充が喫緊の課題となっているためです。
しかし、道と複数の市町村が同時に観光新税の検討を進めている現状は、課題も内包しています。特に懸念されるのが、道と市町村が旅行者に対して同時に課税する、いわゆる**「二重課税」の問題です。納税者である旅行者の負担感が過度に増してしまうことや、徴収の仕組み、税収の使い道などを巡って、自治体間で綿密な調整が必要となるでしょう。
急増する観光需要に対応!道の積極的な検討姿勢
鈴木直道知事は2019年6月25日の道議会において、「多様化する観光需要に対応するため、法定外目的税の導入による安定的な財源確保が必要」だと強調され、新税導入に向けた検討を加速させる意向を表明されました。法定外目的税とは、地方自治体が独自の判断で、特定の使途(目的)のために法律の範囲外で設けることができる税金のことです。
道の2019年度の観光関連予算は、補正予算を含めると過去最高の21億9千万円に達する見込みです。これは、観光予算が6年連続で増額されてきた結果ではありますが、爆発的に増える訪日客に対応するためのインフラ整備には、まだ十分な水準とは言い難いのが実情でしょう。2018年には、道の諮問機関である道の観光審議会から、新たな財源導入の検討を知事に答申しており、これを受けて道は具体的に動き出しました。
道が検討しているのは「宿泊税」を念頭に置いたもので、一定額以上の宿泊代金に対して数百円規模の税金を課す「定額制」を想定されています。今後は、実際に税を徴収する作業を担うことになる宿泊事業者とも協議を進め、民間の負担などを聞き取りながら、詳細を詰めていく方針です。また、新税を検討している道内市町村とも近いうちに、税の使途や徴収方法などについて意見交換を開始する予定です。
札幌市からリゾート地まで、相次ぐ市町村の導入検討
道内の各市町村も、観光税導入の検討を相次いで表明しています。北海道経済の中心地である札幌市は2019年6月に検討を始めました。当初は、宿泊料金の上昇やホテルの事務負担増加を理由に、宿泊税の導入にはやや消極的な姿勢でしたが、道が先行して導入した場合に税収の一部を取り逃すことになりかねないため、検討に踏み切ったと推測されます。
特に注目すべきは、国際的なスキーリゾート「ニセコ」を抱える自治体の動きです。倶知安町は、2019年11月をめどに宿泊税を導入する意向で、町内の宿泊施設に泊まる際の料金の2%を徴収する定率制**を採用する予定です。隣接するニセコ町も、2021年6月からの導入を目指しており、リゾート地域のインフラ維持・整備に対する強い危機感が伺えます。
さらに、富良野市も安定した税収が見込めることなどを理由に、定率制の宿泊税を検討しています。2019年7月には、観光事業者などを交えた有識者会議を設けて検討を加速させ、2021年にも導入したい考えです。このほか、函館市も宿泊税を軸とした検討委員会を設けて議論を進めています。
SNSでの反響と編集者の見解:「納税者置き去り」は避けられるか?
宿泊税などの観光税は「法定外目的税」にあたり、税金の使い道や金額までを条例で明確に定める必要があります。これらの税金導入の報道に対して、SNS上では「増え続ける観光客のためのインフラ整備は必要」「旅行者も受益者負担として支払うべき」という賛成意見がある一方で、「宿泊料金に上乗せされることで、旅行のハードルが上がってしまう」「道と市町村で二重に課税されたら負担が大きすぎる」といった懸念の声も上がっています。
私の意見としては、財政難に直面する各自治体にとって、観光税が新たな財源として魅力的に映るのは当然のことです。特に外国人観光客が多く訪れる地域では、その必要性は高いでしょう。しかし、重要なのは、税を課す側である道と市町村の間での調整が不十分なために、納税者である旅行者が「置き去り」になってしまう事態を避けることです。実際に福岡県と市で課税権を巡る対立が起きた事例もあり、透明性の高い議論と、旅行者に対する丁寧な説明が強く求められるでしょう。
観光客に課税する税金は、その使い道が明確で、旅行体験の向上に直結するインフラ整備やサービスに充てられるからこそ、納税者にも理解が得られます。北海道全体で観光の質を高めていくためにも、この複雑な課題に対する慎重かつ建設的な検討を期待したいところです。
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